P-I-F-12
混合型総肺静脈還流異常の手術症例の検討
長野県立こども病院心臓血管外科1),長野県立こども病院循環器科2)
本田義博1),原田順和1),平松健司1),益原大志1),内藤祐次1),里見元義2),安河内聰2),松井彦郎2),北村真友2),男澤 拡2)

【背景】総肺静脈還流異常(以下TAPVC)のうち混合型では,形態によって一期的な根治は行わず一部の肺静脈還流異常を残してのrepairが行われる.今回われわれの施設での混合型TAPVCの手術症例につき検討し,報告する.【対象】当院での1993年以来のTAPVC手術症例のうち,heterotaxyに合併しない,混合型TAPVCは 6 症例であった.内訳はDarling分類Ia + IIa型が 3 例,Ia + Ibが 1 例,III + Ia + Ibが 1 例,III + Iaが 1 例であった.手術時の年齢は 5 日~1 歳 9 カ月(平均4.6カ月),体重は1,670g~8.7kg(平均4.0kg)であった.手術時年齢 1 歳 9 カ月,体重8.7kgでIa + Ib型の 1 例ではtotal repairが施行されたが,他 5 症例では肺静脈の一部の還流異常を残してのrepairが行われた.【結果】症例follow up期間は最長 8 年,平均34カ月.周術期・遠隔期死亡例はなかった.1 例で,術後 3 カ月での吻合部狭窄による再手術を必要としたが遺残還流異常の狭窄に伴う呼吸・循環動態の悪化を来した症例はみられなかった.4 例では術後心カテが施行されていた.心臓カテーテル検査は術後 1 年前後(10~19カ月後)に施行されており,1 例で遺残還流の閉塞を認めていたが,右室収縮期圧は25~29mmHg(平均27.3mmHg),右室収縮期圧と左室収縮期圧の比は0.24~0.35(平均0.29)であった.Qp/Qsは1.0~1.45(平均1.11)であった.【考察】混合型TAPVCの手術症例では,初回手術で一部の肺静脈還流異常を放置せざるをえないことがある.当院での手術症例の検討では,6 例中 5 例で肺静脈還流異常を放置したがいずれも術後急性期,遠隔期とも良好な経過をたどった.術後のカテーテル検査でも肺高血圧の良好な改善を認め,Qp/Qsの上昇も軽度といえるものであった.混合型TAPVCの初回手術において,一部の肺静脈還流異常を遺残させる手術戦略は,十分妥当性のあるものであると考えられた.

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