P-I-F-13
上心臓型総肺静脈還流異常を合併した無脾症候群に対する治療戦略
岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科1),岡山大学大学院医歯学総合研究科小児科2),岡山大学大学院医歯学総合研究科麻酔・蘇生科3)
小泉淳一1),石野幸三1),河田政明1),大月審一2),片岡功一2),竹内 護3),多賀直行3),佐野俊二1)

【目的】総肺静脈還流異常TAPVCを合併した無脾症候群に対する新生児期TAPVC repairは術後肺静脈狭窄を高率に合併し,その成績は極めて不良である.われわれは上心臓型に限ったTAPVCを合併した無脾症候群に対し早期TAPVC repairをできる限り避ける方針で臨んできた.今回その治療成績を検討し治療戦略について考察した.【対象と方法】過去17年間に当院で経験した上心臓型TAPVCを合併した無脾症候群は 8 例であった.初診時日齢 0~34日,体重2.3~3.9kg.合併奇形は肺動脈閉鎖(+)7 例/(-)1 例,両側上大静脈 5 例,moderate以上の房室弁逆流 1 例であった.術前肺静脈狭窄(+)の 3 例(PVO群)に対しては新生児期TAPVC repairと体肺動脈短絡術あるいは肺動脈絞扼術を施行.肺静脈狭窄(-)の 5 例(非PVO群)に対してはTAPVCは放置し体肺動脈短絡術のみ施行,第 2 期手術としてTAPVC repairと両方向性グレン手術(4 例)またはTCPC(1 例)を施行した.【成績】PVO群(n = 3):手術死亡 2 例(MOF),遠隔期死亡 1 例(1 歳PVO).非PVO群(n = 5):手術死亡 0 例,遠隔期死亡 1 例(6 歳TCPC到達後心不全),TCPC到達 4/5 例,TCPC待機 1/5 例,術後PVO 0 例.【結論】上心臓型TAPVCを合併した無脾症候群に対してはできる限りTAPVCは放置し肺血流コントロールのみ行い,第 2 期手術時にTAPVC repairとBDGまたはTCPCとの同時手術をすることが望ましい.今後,術前PVOを認めた場合は垂直静脈へのステント留置など異なったアプローチによる戦略を検討している.

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