P-I-F-14
肺静脈狭窄を合併した部分肺静脈還流異常症に対する肺静脈狭窄解除 + 上大静脈右房吻合による根治術
三重大学医学部胸部外科1),三重大学医学部小児科2)
高林 新1),新保秀人1),横山和人1),梶本政樹1),矢田 公1),澤田博文2),三谷義英2),駒田美弘2)

【目的】肺静脈狭窄(PVO),心室中隔欠損症(VSD)を合併し乳児期に重症肺高血圧(PH)を呈した上大静脈還流型部分肺静脈還流異常症(PAPVC)を経験した.PAPVCとPVOの合併はまれであり,今回われわれはPVO解除術に加え,上大静脈右房吻合によるPAPVC根治術,VSD閉鎖術を同時施行し,良好な結果を得たので報告する.【症例】年齢:11カ月,手術時体重:6.2kg,男児.診断はPAPVC(rt. total),VSD(II)で,術前rt. PVOの所見を認めsevere PHを合併していた.手術:右肺静脈は上大静脈─右房接合部から1.5cm頭側の上大静脈に還流しており,心房内パッチ修復では術後右肺静脈狭窄が危惧されたため,上大静脈右房吻合による開心根治術を選択した.中等度低体温体外循環,心停止下に心房中隔欠損を作成,左房内の左肺静脈開口部の膜様狭窄を切除した.VSD閉鎖後に上大静脈を離断,奇静脈流入部と上大静脈右房側を閉鎖した.上大静脈流入部に限局した右肺静脈狭窄に対し,右肺静脈の長軸方向に切開し,短軸方向に縫合閉鎖して自己肺静脈組織のみで狭窄解除術を行った.右房壁フラップにて右上肺静脈から左房への血流路を作成した後,大動脈遮断を解除した.上大静脈を右心耳に吻合し,術後上大静脈狭窄を回避する目的で自己心膜にて右房壁を補填した.術後経過:術後肺静脈狭窄:上大静脈狭窄を認めなかった.【結語】(1)肺静脈還流が上大静脈─右房接合部より頭側で心房内パッチによる修復が困難な症例では上大静脈右房吻合は有用な術式と考えられた.(2)肺静脈狭窄の合併に対しても,狭窄解除を同時施行することで良好な結果が得られた.

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