P-I-F-15
血行動態的に共通肺静脈閉鎖であったTAPVCの 1 治験例
天理よろづ相談所病院心臓血管外科1),山梨大学医学部第二外科2),天理よろづ相談所病院小児循環器科3)
上原京勲1),西村和修1),杉田隆彰1),西澤純一郎1),亀山敬幸1),川西雄二郎1),武田崇秀1),松村正彦3),須田憲治3),松本雅彦2)

近年,総肺静脈還流異常(TAPVC)の手術成績は向上しているものの,肺静脈閉鎖を伴う例ではいまだ成績は安定していない.今回われわれはまれな肺静脈還流を示したTAPVCを経験したので報告する.【症例】40±1d,3,525gにて出生の男児.生直後より全身性チアノーゼ認め,生後 7 時間後に搬送された.SpO2 30台でXp上,著明な肺うっ血を認めた.血液ガスはPH 7.27,PCO2 56,PO2 19(SpO2 24.1),B.E -2.5であった.血圧は50台を維持していた.エコー上,左房へのPV還流なく,TAPVC疑われたがCPVは非常に小さく,また,そこからの垂直静脈は確認されなかった.挿管管理にてもSpO2は50台で心カテにてPV,CPVを確認する方針としたが,血圧が低下傾向となり,生後11時間に緊急手術介入した.この段階で確定診断はついていなかった.両側の肺はリンパ浮腫が非常に強かった.体外循環下で垂直静脈を検索したが確認できず,SVCに流入する径 2mm弱の血管を認めたのみで,これは切断した.術中,共通肺静脈閉鎖と診断した.CPVは10×4mmの大きさであった.循環停止下でsuperior approachによりCPV切開.左右PVは 2 本ずつあった.非常に小さなCPVであったため吻合部は左右PV開口部までとり,左房と吻合,吻合の横径では 9mmとなった人工心肺からは離脱できたが,開胸下で手術終了とした.術直後はPH 7.25,PCO2 70,PO2 90(FiO2 1.0,RR40)と著明な低換気を認め,ECMOも考慮したが,NO,PDで徐々にABG改善,術 6 日目に閉胸,術10日目にNO中止した.術29日目に抜管した.エコー上問題なく経過したがHOT施行下に退院しえた.術後 4 カ月での心カテではPVO,PHなくHOTを中止しえた.また,この時,肺内のrt upper PVからSVCへ向かう盲端となった血管を認めた.この血管が小さな垂直静脈となっていたため術前ショックに陥らなかったと考える.【まとめ,結語】血行動態的には共通肺静脈閉鎖であったまれな肺静脈還流を示すTAPVCを経験,良好な結果を得た.

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