P-I-F-16
TAPVC術後PVOの治療
東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科
遠藤雅人,崔 禎浩,田林晄一

【目的】総肺静脈還流異常症(TAPVC)手術成績は安定してきたが,術後のPV obstruction(PVO)はいまだに重篤な合併症である.われわれは1991年から2003年まで経験したTAPVC手術例の術後PVO発生例を検討し,その治療について考察する.【症例】1991年 1 月から2003年12月まで当施設で手術したTAPVCは33例で男22例,女11例で手術時年齢は 2 日から 4 カ月であった.TAPVCの分類はDarling Ia型11例,Ib型 6 例,IIa型 8 例,IIb型 2 例,III型 6 例であった.PVOの診断は心臓エコー検査でCommon PV─左心房(LA)吻合部の流速が1.8m/sec以上とした.33例中手術死亡は 6 例(18%)であった.生存した27例中13例に術後PVOを合併した.PVOを合併した例でも手術直後は吻合部流速が1.5m/sec以下であったが,1 例を除いて術後 3 カ月以内に流速が1.8m/secを超え,徐々に肺高血圧も進行した.PVO発生とDarling分類の関係では I 型で 9/17,II型で 2/10,III型で 2/6 とII型で少なかった.PVO発生と吻合法との関係では連続縫合と結節縫合,吸収糸と非吸収糸の違いで差はなかった.手術時期1991~1995年と1996年以降を比較すると手術死亡が30%(4/13)から10%(2/20)に減少したが術後PVO発生率に差はなかった.PVO 13例のうち 9 例に計11回のPVO解除手術を行い現在 3 例が生存している.PVO解除術式として右側左房─吻合口─右肺静脈と切開し,有茎自己心膜で吻合部天井を形成する方法を 2 例に施行し有効であった.また,1999年以降小児科で中等度PVOとされた 6 例にプレドニン 2mg/kg/day連日投与を行い,2 例で半年後までに吻合部の流速が正常化した.【結論】TAPVC手術後のPVOはほとんど術後 2,3 カ月以内に形成されるため,この間定期的に心臓エコー検査を行い,吻合部の流速をフォローすることが重要であり,初期にはプレドニン投与も考慮されるがPVOが進行する場合は速やかにPVO解除手術を施行すべきである.

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