P-I-F-17
総肺静脈還流異常症乳児期手術の検討
天理よろづ相談所病院心臓血管外科1),天理よろづ相談所病院小児循環器科2),山梨大学第二外科3)
杉田隆彰1),西村和修1),西澤純一郎1),亀山敬幸1),川西雄二郎1),上原京勲1),武田崇秀1),須田憲治2),松村正彦2),松本雅彦3)

【目的】総肺静脈還流異常症(TAPVR)乳児期手術につき報告する.【対象】対象は1994年10月~2003年11月に施行した,TAPVR乳児期手術例11例.手術時日齢は 0(生後11時間)~112日で新生児症例が 7 例.TAPVRのタイプはIa 2 例,IIa 2 例,IIb 1 例,III 3 例,common PV atresia(CPVA)1 例,asplenia合併 2 例.術前状態としてはCPVAとaspleniaの各 1 例がショックのため気管内挿管を行われていた.また,IIb例はVSDの手術中にTAPVRの合併を指摘された.体外循環は,循環停止は行わず,視野不良時は一時的にlow flowとし対処しており,共通肺静脈と左房の連続縫合には 7-0 ポリプロピレン糸を使用している.【結果】手術死亡はaspleniaの 1 例.抜管は術後17.2~700時間,中央値術後43.9時間で,CPVAで術後の呼吸管理に難渋し,術後700時間で抜管となった.術後の肺静脈の流速(PVF)は0.4~2.0m/secでTAPVR III術後の 1 例が2.0m/secと1.5m/sec以上であったが,遠隔期の心臓カテーテル検査ではPVOは認められていない.生存例は術後12~80日,平均27.6日で退院した.遠隔期にはTAPVR IIaの 1 例が肺静脈狭窄(PVO)となり,初回術後77日に再手術を施行したが,手術死亡した.また,Iaの 1 例が術後約 1 年の心臓カテーテル検査時に左肺静脈のPVOを指摘され,術後約7.5年の心臓カテーテル検査時には閉塞を指摘されているが,2000年以降にPVOの発症はない.【結語】TAPVRでは,術後早期および遠隔期のPVOが大きな問題であり,術後早期は心臓エコーにより瀕回評価し,術後 1 年程度では心臓カテーテルによるさらなる評価が肝要である.

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