P-I-F-18
総肺静脈還流異常症(TAPVD)術後の長期予後について
大垣市民病院小児循環器新生児科1),大垣市民病院胸部外科2)
西原栄起1),倉石建治1),田内宣生1),鈴木登士彦2),六鹿雅登2),横手 淳2),横山幸房2),玉木修治2)

【目的】TAPVD修復術後の長期予後についての報告はいまだ散見される程度である.今回,当院で経験した症例の長期予後を検討した.【対象と方法】対象は1989年 1 月から2003年12月までに当院でTAPVD修復術を施行した32例(heterotaxy含む)のうち,術後経過を 5 年以上観察しえた13例(TAPVD単独12例,heterotaxy合併 1 例).男女比は11:2.手術時年齢は日齢 0~4 歳(新生児期 6 例,乳児期 4 例,幼児期 3 例).術後観察期間は6.2~14.2年(平均9.3±2.9年).病型は,上心臓型10例,心臓型 2 例,下心臓型 1 例.肺静脈閉塞(PVO)に関しては,心エコー上,肺静脈最大流速(PV max velocity)が1.8m/sec以上かつ右室圧の上昇を認めたものをPVOとした.これらについて後方視的に検討をした.【結果】13例の平均PV max velocityは1.49±0.43m/sec.4 例(30.8%)でPVOを生じ,PVO進行予防にステロイド内服治療を行った.PVO発生時期は術後 0~188日(平均129.3±87.6日).2 例でPVO解除術が施行され,1 例(7.8%)で,PVOが残存した.術後の不整脈,心電図変化では,1 例で完全房室ブロック,2 例で上室期外収縮,8 例で不完全右脚ブロックを認めた.【まとめ】PV max velocityは平均約1.5m/secと正常よりも速い傾向にあったが,治療の介入を受けた症例以外でPVOの有症状例はなかった.4 例に対してPVO進行予防にステロイド治療を行い,2 例でPVOの進行を防止できた.PVOに対するステロイド投与がある程度有効であったことが示唆された.術後不整脈に関しても 1 例完全房室ブロックを認めたが,他の症例では重篤な不整脈の出現は認められなかった.PVO,術後不整脈の発生率は低く,長期予後としては良好であると考えられた.

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