P-I-F-19
「環状肺静脈交通」を形成した総肺静脈還流異常の成因を考える
国立循環器病センター小児科
北野正尚,渡辺 健,黒嵜健一,高杉尚志,越後茂之

【趣旨】総肺静脈腔も中心肺静脈も存在せず,左右上下の末梢肺静脈が環状に交通していた総肺静脈還流異常の 1 例を経験した.「環状肺静脈交通」の報告は見いだされず,発生学的に貴重であると思われるので報告する.【症例】症例は在胎33週,体重2,640g,アプガースコア 5/7(1 分/5 分)点で出生した女児.診断は右側相同,無脾症候群,共通房室弁口,共通心房,左室の低形成,両大血管右室起始,肺動脈弁下狭窄,両側上大静脈,総肺静脈還流異常,肺静脈狭窄.生直後から重度の低酸素血症(PaO2 17mmHg)が続き,人工呼吸管理を行った.心エコー図で両側の上大静脈へ流入する異常血管を認めたが,総肺静脈腔も中心肺静脈も確認できなかった.緊急で行った肺動脈造影の結果,共通肺静脈腔および中心肺静脈は存在せず,左右上下の末梢肺静脈は環状に交通し,3 本のbridging vessels(右に 2 本,左に 1 本)を介して左右の上大静脈へ還流しており,上大静脈への流入部の 3 カ所はすべて狭窄していた.【考察】本症例のように末梢肺静脈の複雑な結合が残存するのは,総肺静脈腔が形成されなかったあるいは形成後ごく早期に退縮した結果と考えられる.同様な報告症例を含めて推察すると,複雑な肺静脈結合がありかつ中心肺静脈が存在しない場合は総肺静脈腔無形成の結果の一型と考えられる.

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