P-I-G-2
一側高度肺動脈狭窄および対側肺高血圧症を伴う機能的単心室症に対する両方向性グレン手術
東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科
崔 禎浩,遠藤雅人,赤坂純逸,熊谷紀一郎,高橋悟朗,田林晄一

両方向性グレンシャント手術はフォンタン型手術への段階的手術として広く行われるようになったが,その手術時期,年齢,疾患対象,肺循環の指標の適応基準はいまだ明確でない.その中でも肺血管抵抗は最も重要な因子の一つとされわれわれの施設では肺血管抵抗係数 4wu未満,平均肺動脈圧35mmHg以下を一応の基準としている.しかし高度の肺動脈変形を伴う場合や一側肺動脈の肺血管抵抗が異常高値を示すものでは術前の左右肺動脈循環動態の正確な評価は難しく,その適応は決めがたい.今回,肺動脈絞扼術後一側高度肺動脈狭窄,対側肺高血症となり両方向性グレン手術を施行し良好な経過を得た症例を経験したのでその適応と臨床経過を検討した.症例は 5 カ月の男児で,診断はDORV,MA,PHで生後19日目,肺動脈絞扼術を施行した.その後,チアノーゼが進行し 5 カ月時の造影でバンディングテープがmigrationしたためと考えられた右側肺動脈起始部狭窄(最狭部2.3mm),左側肺高血圧症を呈していた.術前カテーテル検査で右肺動脈平均圧11mmHg,左肺動脈圧62/34mmHg,Rp 右1.0・左9.0wu,PA index 352であった.手術は肺動脈形成および両方向性グレンシャント手術を施行した.術中からNO療法を併用し人工心肺からの離脱は容易であった.術後 1 カ月の心カテーテル検査では肺動脈圧は左右ともに14mmHg,Rp 1.7wu,動脈血酸素飽和度82%と良好な経過であった.両方向性グレン手術非適応と考えられた一側高度肺動脈狭窄を伴う対側肺高血圧症例でも,その解剖学的条件,年齢を含めた肺血管病変を考慮し積極的な肺動脈形成術を行い,肺血流分布の正常化を図ればその適応が拡大できる可能性が示唆された.

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