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先天性心疾患に対する姑息手術後に肺静脈狭窄を来した 2 症例
埼玉県立小児医療センター循環器科1),埼玉県立小児医療センター心臓外科2)
安藤達也1),小川 潔1),星野健司1),菱谷 隆1),菅本健司1),中村 譲2),野村耕司2),黄 義浩2)

【はじめに】術後の肺静脈狭窄は総肺静脈還流異常症や完全大血管転換の心房内血流転換術後にしばしば経験されることであるが,その他の手術で認められることはまれである.今回,われわれは肺動脈絞扼術,Blalock-Taussig(BT)短絡術,大動脈縮窄修復術といった肺静脈狭窄の直接的な原因とは考えにくい手術後に,肺静脈狭窄を来した 2 症例を経験したので報告する.【症例 1】三尖弁閉鎖(1b)の女児.生後 2 カ月に左BT短絡術,5 カ月時にBCPSを施行した.出生当初は肺血流の左右差は目立たなかったが,BCPS術後 5 カ月の造影では順行性の左肺血流が減少し左肺動脈への側副血行が発達した.BCPS術後 2 年 7 カ月の造影では左肺静脈狭窄が著明となり,左肺への血流はさらに減少,側副血行よりの血流も減少した.側副血行および左肺動脈の血流は,ともに左肺動脈から右肺動脈へと流れていた.【症例 2】共通房室弁口,大動脈縮窄,三心房心の男児.日齢10に大動脈縮窄修復および肺動脈絞扼術を施行した.月齢 9 カ月,三心房心に対し隔壁除去術を施行.左室容積が不十分で二心室での根治術は施行せず,進行したチアノーゼに対し右BT短絡術を施行した.術後は肺血流量増加に伴う心不全のため,人工呼吸管理と腹膜透析から離脱できず,20日後,BT短絡を結紮した.その間に計12日間の胸腔ドレナージを要した.1 歳 1 カ月時に施行した血管造影では左肺静脈は完全に閉塞し,左肺動脈へ向かう側副血行よりの血流も,左肺動脈より右肺動脈へと流れていた.【考察】2 症例においては,側副血行の発達と左肺動脈から右肺動脈へ逆行する血流が共通する.文献的には体肺動脈側副血行の発達や,術後胸腔ドレナージの遷延,胸骨閉鎖の遷延などと肺静脈狭窄の関わりを示唆する報告が見られる.

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