P-I-G-5
開心姑息術における肺血流調節―積極的な二期的胸骨閉鎖―
近畿大学医学部奈良病院心臓血管外科1),近畿大学医学部奈良病院小児科2)
長門久雄1),西脇 登1),金田幸三1),上谷鉄矢1),田中裕史1),青木隆之1),平尾慎吾1),吉林宗夫2),三崎泰志2)

【目的】乳児期早期の開心姑息術後の適切な肺血流設定のために積極的に二期的胸骨閉鎖(DSC)を選択するようになった.開心姑息術症例の肺血流調節について検討を行う.【対象】2001年 6 月~2003年12月の間に当院にて行った開心姑息術11例,疾患の内訳はHLHS 3,MA 3,UVH CAVC 4,DIRV 1,PA CoPA 3,non-confluent PA 1,PVO 3(cor tri 1,restrictive ASD 2),CoA 1.手術時日齢 8~240(median 35).術式はNorwood (RV-PA 5mm)3,PA plasty + AP shunt(3.5mm*3,4mm)4,EAA 1,ASD creation 2,cor tri repair 1,PAB 3.【結果】病院死亡 3 例(体肺血流不均衡 2,その他 1)【術後肺血流adjustment施行】(1)PAB群では 2 例に計 5 回施行した.MA restrictive ASD PH,日齢90の症例はPA圧を持続モニタし,術後 9 時間でPAB調節,肺血管の反応性がやや落ち着いた術後 4 日目に最終設定しDSCした.(2)AP shunt群 1 例およびRV-PA shunt群 2 例に計 4 回のshunt clippingを行った.FiO2 0.5でPaO2 30半ばから後半,SaO2 70半ばから後半を目標に再設定し人工呼吸管理に余裕をもたせた.(3)最初からDSCの方針をとったのは 5 例(うち 4 例で血流調節),一期的胸骨閉鎖をしたが再開胸し肺血流調節を行いDSCしたものは 2 例あった.(4)縦隔炎を起こしたものはなかった.(5)PAB再調節を行わなかった 1 症例に術後 2 カ月にloose bandingと判断されたものがあった.(6)肺血流過多で術当日失った 1 例(PA plasty + AP shunt,一期的胸骨閉鎖)は血圧,尿量,末梢循環良好であったが気管吸引後に突然循環虚脱を起こした.約 1 時間前はFiO2 0.8でPaO2 40.2 Sat 85.6%であったが,もっと的確な呼吸器調節さらにはclippingも必要であった可能性のある症例と考えられた.【まとめ】二期的胸骨閉鎖を心肺の負担を軽減する目的以外に容易かつ的確に肺血流調節する目的で行った.肺体血流不均衡の迅速な是正で救命につながった症例もあった.

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