P-I-G-7
肺血管床低形成例に対するoriginal BTSの検討
長野県立こども病院心臓血管外科1),長野県立こども病院循環器科2)
日比野成俊1),原田順和1),平松健司1),益原大志1),本田義博1),里見元義2),安河内聰2),松井彦郎2)

【目的】近年Fontan手術に対する成績向上に伴い,肺血管条件が厳しい症例にも適応が拡大されてきている.しかし,肺血管床の発育が不良のため,また他の合併奇形のために根治手術に到達できない症例に対する治療方針には問題が多い.こうした症例に対する長期予後を考慮したoriginal BT shunt(o-BTS)の有用性を検討する.【対象,方法】1994年から2003年までに当院でo-BTSを施行された17例を対象とし,症例の特徴,術後遠隔期成績等を検討した.症例はTA 3 例,Ebstein + PA 1 例,asplenia + SRV + PA(PS)10例,VSD + PA + MAPCA 2 例,TOF 1 例であった.o-BTS時の平均年齢は1.3±1.4歳,平均体重は5.9±3.4kgであった.o-BTSを必要とした理由は,肺血管抵抗が高値(平均4.4±2.2U)のためにFontan型手術が困難:7 例,nonconfluent PA:5 例,VSD,PA,MAPCAで肺血管床が乏しく根治術不能:2 例,気管狭窄の合併のためFontan型手術が困難:1 例,他の重度精神発達遅滞の合併:2 例【結果】o-BTS術後4.0±2.4年の経過観察期間で,病院死亡 1 例(共通房室弁逆流による心不全,低酸素血症にて生後 4 カ月時にbidirectional Glenn + 房室弁形成術施行されるも,低酸素血症が改善せず,original BTSを施行されたが,術後 3 日目に気管出血を伴う低酸素血症のため死亡).遠隔死亡 1 例(asplenia,DORV,nonconfluent PAに合併したTAPVRに対するrepair後のPVOのために術後 2 カ月で死亡).Kaplan-Meier法による累積生存率は 5 年90.5%であった.肺血管抵抗高値のためFontan型手術の適応外としてo-BTSを施行された 7 例のうち 3 例はTCPCに到達しえた.nonconfluent PA症例の生存例 4 例のうち 2 例はTCPC,1 例はbidirectional Glennを施行された.o-BTSのみの10例では,術後遠隔期SaO2は78±8%であり,shuntは全例開存していた.【考察】肺血管の発育不良,他の合併奇形のために根治手術に到達するのが困難な症例に対するo-BTSは有用であると考えられた.

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