P-I-G-9
姑息手術としての三尖弁口閉鎖術
近畿大学医学部小児科1),近畿大学医学部心臓外科2)
篠原 徹1),三宅俊治1),池岡 恵1),竹村 司1),北山仁士2),佐賀俊彦2)

エプスタイン病や肺動脈閉鎖はそのspectrumの広さから症例ごとに外科治療戦略を練る必要がある.2 例に対し乳児期早期に三尖弁口閉鎖術を実施し有効であったので報告する.【症例 1】2 歳 8 カ月,女児.兄は三尖弁閉鎖.在胎39週,2,789g,アプガー 8/8 点で出生.出生直後から強いチアノーゼを認め,心エコー検査で肺動脈閉鎖を伴うエプスタイン病と診断.生後 1 カ月時に左右のBlalock-Taussig短絡手術を行いチアノーゼの改善を認めたが,哺乳力不良や多呼吸など心不全症状から脱却することができず,また,本患児の最終到達目標をFontan型手術と設定し 4 カ月時にStarnes手術(= 三尖弁口閉鎖と右房縫縮)および右房化右室縫縮,心房中隔欠損口の拡大を実施.心不全症状は明らかに改善し,患児は 1 歳 9 カ月時の両方向性Glenn手術を経てFontan型手術待機中.【症例 2】死亡時年齢 2 歳 7 カ月,男児.在胎39週,3,036g,アプガー 9/9 点で出生.出生直後から強いチアノーゼを認め,心エコー検査で心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖と診断.心カテーテル検査でsinusoidal communicationの存在を確認,心電図でも虚血像有.生後 1 カ月時に右のBlalock-Taussig短絡手術および中心体肺動脈短絡手術を実施,チアノーゼの改善は得られたが,心電図の虚血像は持続.本患児の最終到達目標をフォンタン型手術とし,また,虚血所見の改善をも期待して生後 2 カ月時に心房中隔欠損口の拡大と三尖弁口閉鎖を施行.2 歳 7 カ月,開窓つきTCPC手術を行ったがLOSのためtake down,術後 7 日目に死亡.【考察】三尖弁口閉鎖は心不全や虚血所見の改善に有効であり,新生児期~乳児期早期に実施することも理にかなっている.ただし,パッチの縫着部位や完全閉鎖が良いかなどの検討は必要である.

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