P-I-G-10
新生児期発症エプスタイン奇形,心室中隔欠損に対するmodified Starnes手術の経験
群馬県立小児医療センター心臓血管外科1),群馬県立小児医療センター循環器科2),群馬大学医学部第二外科3)
村上 淳1),鈴木政夫1),行木太郎1),小林富男2),小林 徹2),鈴木尊裕2),金井貴志2),森下靖雄3)

【はじめに】新生児期に発症するEbstein奇形は,重症で予後不良とされている.今回われわれはVSDを合併した新生児期発症Ebstein奇形に対し,modified Starnes手術を施行したので報告する.【症例】妊娠中は母児ともに異常は指摘されなかった.在胎40週,2,468gで出生し,日齢 1 でチアノーゼ,心雑音を認め当院に紹介となった.胸部X線写真ではCTR 72%と心拡大を認めた.心臓超音波検査でEbstein奇形,VSD,PDA,PFOと診断された.三尖弁中隔尖にplasteringおよび 4 度の三尖弁逆流を認めた.VSDは径が約 7mmで左右方向の短絡のみであった.強心剤,利尿剤で内科的管理を開始したが,心不全が制御困難なため日齢12に手術となった.【手術】体外循環を確立しPDA結紮後心停止し,右房切開にて心内に到達した.三尖弁弁輪径は10mmで中隔尖は約 7mm右室側に偏位し,前尖および後尖の健索と乳頭筋は形成不全により一塊の膜様で,前尖両側の交連部も未形成で肉柱および流出部へは 2mm程度の孔で通ずるのみであった.まず三尖弁形成を試みたが不可能であったためmodified Starnes手術とした.VSDと三尖弁をePTFEパッチ閉鎖したが,AV node部付近では三尖弁パッチを縫着しなかった.さらに心房間孔拡大,右房縫縮,modified BT shuntを行った.体外循環からの離脱は容易で術後 2 日目に二期的胸骨閉鎖,術後 6 日目に抜管し,現在次期手術待機中である.【結語】Ebstein奇形は三尖弁,右室形態など臨床像が多岐にわたっており,術前診断も容易ではないため,術式の選択には注意を要する.今回われわれは新生児期発症のVSDを合併したEbstein奇形に対してmodified Starnes手術を行い良好な結果を得たので報告した.

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