P-I-G-11
左室心筋緻密化障害様のエコー所見を呈した大動脈縮窄症の 1 例
近江八幡市民病院小児科1),滋賀医科大学小児科2)
伊藤英介1),岡本暢彦1),藤野英俊2),中川雅生2)

左室心筋緻密化障害は胎児心筋の遺残と考えられ,unclassified cardiomyopahtyの一つとして分類されている.合併心疾患は左室流出路狭窄や冠動脈起始異常が報告されてきたが,最近の本邦の報告では,より頻度の高い心室中隔欠損や心房中隔欠損との合併例が多くみられている.今回われわれは,大動脈縮窄症例に左室心筋緻密化障害と考えられるエコー所見を呈したが,術後には軽快した 1 例を経験したので報告する.【症例】2 カ月男児.妊娠・分娩歴に異常なく,生後は体重増加も良好であった.咳嗽,喘鳴を主訴に近医受診し細気管支炎と診断され入院となったが,徐々に呼吸状態が悪化したため当院転送され,人工呼吸管理となった.胸部聴診所見で心尖部にLevine 2/6の収縮期雑音を聴取,大腿動脈の拍動は微弱であり,また胸部単純写真で心胸郭比は64%と心拡大を認め,心疾患の合併が考えられた.心エコーでは,左心系は高度に拡張し左室短縮率は0.27と軽度の機能低下を認め,心尖部から乳頭筋レベルにかけては著明な肉柱形成がみられ心筋緻密化障害が疑われた.大動脈縮窄が認められたが動脈管は閉鎖しており,また重度の僧帽弁閉鎖不全がみられた.大動脈縮窄症に合併した左室心筋緻密化障害と診断し,感染の消退を待って大動脈再建術を行ったが,術後早期から左室内の肉柱形成は軽快し,術後 6 カ月ではほぼ消失,左室機能も正常化した.【結語】本症例は臨床経過から左室心筋緻密化障害ではなく,大動脈縮窄症に伴う左室の肥大性変化として緻密化障害様のエコー所見を呈したものと考えられる.心疾患に伴う心筋緻密化障害と診断されている症例には単なる肥大性変化の可能性もあり,合併する心疾患に対しては積極的な治療を考慮すべきであると考えられた.

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