P-I-G-16
CoAを伴う上行大動脈径 2mm以下のHLHSに対する自己組織のみを用いたNorwood手術
長野県立こども病院心臓血管外科1),長野県立こども病院循環器科2)
日比野成俊1),原田順和1),平松健司1),益原大志1),本田義博1),里見元義2),安河内聰2),松井彦郎2)

【背景】近年HLHSに対するNorwood手術の成績は向上してきているが,大動脈縮窄症(CoA)を伴い上行大動脈(AAo)が特に細い(2mm以下)症例は,冠動脈血流を保ちつつCoAが残存しないような大動脈弓再建が必要とされ,技術的にも困難である.【症例】当院で2003年に経験したCoAを伴う上行大動脈径 2mm以下のHLHSに対するNorwood手術 3 例を対象とした.3 例の手術時の平均年齢は 9 日,平均体重は3.1±0.3kgであった.手術は腕頭動脈に3.5mmのPTFE graftを吻合して送血,下行大動脈送血を併用し,分離体外循環下に行った.肺動脈幹(mPA)はbifurcationの高さで切断し,CoA部は完全に切除,離断し,大動脈弓の大弯側を下行大動脈と吻合,小弯側をmPAの断端部と吻合して,大動脈弓部の組織で覆うようにして大動脈再建を完成した.AAoはmPAの切断端の高さで切断し,長軸方向に切開を入れ,mPAはこれに対応するようにposterior sinusに切開を入れてAAoとmPAを側々吻合した.胸骨はdelayed closureとした.平均大動脈遮断時間は104±20分,平均体外循環時間は264±74.7分,平均手術時間は532±127分,平均ICU滞在日数は18±3.2日であった.全症例とも術後経過は良好であった.【結語】CoAを伴う,上行大動脈径が特に細い症例では,(1)CoAを残さないように完全に切除し,自己組織のみで大動脈弓を再建する,(2)上行大動脈,肺動脈に切開を入れて側々吻合することで,冠動脈血流を安定して確保できるようにすることが,重要なポイントであると考えられた.

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