P-I-G-19
年長児の先天性大動脈弁狭窄症手術
国立函館病院小児外科1),国立函館病院小児科2),札幌医科大学第二外科3),札幌医科大学小児科4),国立循環器病センター心臓血管外科5)
印宮 朗1),野木俊二2),森川雅之3),高木伸之3),安倍十三夫3),富田 英4),坂東 興5),八木原俊克5)

年長児のRoss手術は,大動脈基部全置換法を用いることで手技的にさほど困難でなく,術後の患児のQOLを考慮すると極めて良い適応である.さらに最近は凍結保存同種肺動脈弁の使用も可能であり,肺動脈の再建が容易になった.今回,われわれは年長児に対し,肺動脈再建に凍結保存同種肺動脈弁を用いた 2 例を含めたRoss手術 4 例を経験したので報告する.症例は13歳から15歳の先天性大動脈弁狭窄症の男児で,大動脈弁の圧較差は20~60mmHg,2 例にPTAVの既往があり,術前,大動脈造影上 2 度以上のARを 2 例に認めた.また,1 例に右冠動脈起始異常を認めた.心エコー上,他に心内奇形を認めなかった.術前NYHAは 1 度 2 例,2 度 2 例であった.手術は 4 例とも体外循環下に自己肺動脈弁採取,full root法にて大動脈弁置換術を施行した.大動脈弁輪が拡大した 1 例には弁輪縫縮術を加えた.肺動脈の再建は 2 例を凍結保存同種肺動脈弁で,2 例をePTFEで作成した弁付きグラフトと自己心膜で行った.平均大動脈遮断時間193分,平均体外循環時間300分であった.手術死亡はなく,1 例は完全無輸血手術であった.術後,1 例に心タンポナーデによる血腫除去術を施行した.4 例とも24時間以内の人工呼吸器離脱が可能であったが,1 例のみ一過性のLOSによる術後肝機能障害にて再挿管となった.ICU滞在日数は平均3.8日.平均術後在院日数は23.8日であった.術後の心カテーテル検査において,4 例とも大動脈弁に圧較差はなく,良好に機能しており,冠動脈もintactであった.今後も年長児の先天性大動脈弁狭窄症においては積極的にRoss手術を選択する方針である.

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