S-II-5
閉塞性肥大型心筋症に対する新しい治療の動向
東邦大学医学部第一小児科
佐地 勉

肥大型心筋症の基本病態は肥厚心筋による心室拡張不全であり,家族例が30~40%にある.その約25%は閉塞型HOCMである.その治療は(1)β遮断薬(propranololその他),(2)Ca拮抗薬verapamil,dipyridamole,(3)I-A群抗不整脈薬のdisopyramide,cibenzoline,(4)経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA:percutaneous transluminal septal myocardial ablation),(5)両室DDDペーシングなどで良好な結果を示す報告例がある.外科的な(6)左室心筋切除術は最終的な選択であり,拡張相HCMは心臓移植対象である.PTSMAは1995年Sigwartにより報告された低侵襲治療で,薬物療法難治性心不全や不整脈に対して,contrast echoにより確認された閉塞中隔心筋を灌流する責任中隔枝へ,超選択的に無水エタノール 1~2mlを注入し閉塞心筋を壊死させる治療である.本邦では高山,土金らの成人例の集計があり,2002年の日本循環器学会ガイドラインではClass IIとされている.若年例も 2 例報告されている.本来は成人が対象であるが10歳代の若年例も 2 例報告されている.適応は安静時圧較差40~50mmHgが目安であり,流出路,中流部,複合閉塞例とも効果があり,壁厚減少と狭窄部の拡大が得られる.長期では自由壁の肥厚減少,心筋重量減少,肥大退縮も起こるとされる.問題となるのは,体格の小さな小児への技術的問題,CRBBB(50~60%)の発生,多くは一過性の完全房室ブロック(5~10%)(PM植え込みは5%以下),mortality(1~2%)である.また 6 年以後の長期的予後は不明で,再肥厚,壊死心筋巣残存による催不整脈性の可能性が問題点とされている.日循ガイドライン(Circ J, suppl 2002, 66: 1351),ACC/ESC Expert Document (JACC 2003, 42: 1687)でも,いまだstandardな第一選択ではなく適応決定には慎重を必要とすると記載されている.

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