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KIII-B-6 |
小児におけるトラセミド(ルプラック) |
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学心臓血管外科2)
岩本洋一1),先崎秀明1),熊倉理恵1),石戸博隆1),増谷 聡1),松永 保1),竹田津未生1),小林俊樹1),朝野晴彦2),横手祐二1, 2) |
【背景】新しいループ利尿薬であるトラセミドは,フロセミドに比してカリウム保持性に優れているのみならず,心不全患者の症状をより改善し,死亡率の有意な低下をもたらすことが報告されている.しかしながら小児における本薬剤の効果,副作用についてはほとんど不明である.われわれは,2000年本学会で小人数での使用経験につき報告したが,今回,過去 3 年間における当科でのトラセミドの使用に基づき,小児における有効性と安全性につき検討した.【方法】対象は,2000年12月より,2004年 1 月までにトラセミドを使用した計161例である.うち,フロセミド投与を 3 カ月以上受けていたが,フロセミド 1mgをトラセミド0.2mg相当としてトラセミドに置換したもの30人(A群),新規にトラセミドを開始した131人,そのうち先天性心疾患術後患者が70例(B群),慢性心不全患者61例(C群)であった.尿量,血清電解質,血清K 4.0以上を保持するのに必要な内服K製剤量,静注K投与期間,浮腫,呼吸苦等の心不全症状,血中神経液性因子の検討を行った.【結果】A群の 1 例にてトラセミド置換後,尿量減少と浮腫の出現を見たが,他の症例では尿量に有意差はなかった.A群において,血清K濃度はトラセミド変更後有意に増加し(p < 0.05),約60%の症例でK製剤を中止できた.B群では,術式,術中経過のほぼ同じフロセミド投与の先天性心疾患35人と比較して,トラセミド投与により静注K投与期間が有意に短縮でき,内服K製剤必要量も有意に少なかった(p < 0.05).A群で,トラセミド投与後,血中renin活性,BNP濃度は有意に低下した(p = 0.03,p = 0.04).ABC群ともに,トラセミド投与による主要な副作用は認めなかった.【考察】トラセミドはフロセミドとほぼ同等の利尿作用で,明らかにカリウム保持性に優れている.神経液性因子の変化にも好影響をもたらし,小児においても安全かつ有効な利尿薬として有用と思われる. |
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