KIV-B-5
失神で発見された運動誘発性心室頻拍―当科における 3 例の長期経過―
静岡県立こども病院循環器科
鶴見文俊,伴由布子,石川貴充,大崎真樹,満下紀恵,金 成海,田中靖彦,小野安生

【はじめに】運動誘発性の致死性不整脈の一つとしてカテコラミン源性多形性心室性頻拍(CPVT)が知られているが,当科では本症を含めて 3 例の経験があり,その長期臨床像について検討する.【症例 1】7 歳時,運動後の失神にて受診,癲癇として投薬を受けていたが,徐脈に気付かれ当科紹介された.失神が頻回にありホルター心電図にて 2 方向性持続性心室頻拍が記録されていたが,1991年の症例でCPVTが認識されておらず,無投薬のまま11歳時突然死した.【症例 2】4 歳時,走った後の失神にて受診,癲癇として投薬を受けていた.3 回目の失神後,心室性期外収縮と心室頻拍に気付かれ,当科紹介された.右脚ブロック左軸偏位型の持続性頻拍であり,運動負荷130bpm以上で再現性よく誘発され,その後も失神を繰り返した.薬物負荷ではメキシレチンのみ有効で,電気的除細動は無効,一般に有効とされているベラパミルや高周波カテーテルアブレーションも無効であった.アミオダロンにて頻拍の減少を認めたがR on Tが著明となり中止,メキシレチンの内服と運動制限で厳重に管理されていた.しかし,14歳時,制限を守らず学校で全力疾走し突然死した.【症例 3】9 歳時,水泳中に失神発作を起こし,蘇生から回復した後,トレッドミル,ホルター心電図にて心室頻拍を指摘され当科紹介された.基本は洞性徐脈であり,運動負荷にて再現性よく 2 方向ないし多形性心室頻拍を認め,CPVTの典型例と思われた.その後,プロプラノロールと運動制限により発作は抑制されている.【考察】3 例とも失神にて発見された男児であり,QT延長を認めず,癲癇との鑑別を要した.ベラパミルやアブレーションが有効でない右脚ブロック左軸偏位型心室頻拍も極めて難治性であった.運動制限については,学童期の男児では難しい面があり,薬物療法に限界があり除細動が有効な例には植え込み型除細動器を考慮する必要がある.

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