C-II-36
右冠動脈後下行枝と左冠動脈前下行枝における冠動脈血流予備能の比較―心室中隔欠損症例での検討―
秋田大学医学部小児科1),秋田大学医学部心臓血管外科2)
島田俊亮1),原田健二1),青木三枝子1),豊野学朋1),石井治佳1),田村真通1),山本文雄2)

【目的】超音波診断装置の進歩により左冠動脈前下行枝(LAD)血流のみならず右冠動脈末梢(segment 4)を構成する右後下行動脈(RPD)血流の計測が容易となり,冠動脈血流予備能(CFVR)の評価が可能となった.本研究は超音波心エコーを用いて,左室容量負荷,右室圧負荷を伴う先天性心疾患におけるRPD血流速度およびCFVRを計測し,LADのそれらと比較すること.【方法】対象は心室中隔欠損(VSD)を有す12例(1.2±1.6歳).冠動脈の血流計測はアロカSSD-5500を用いて行った.RPD血流計測は,心尖部よりやや胸骨よりに探触子を置き,segment 3 と後室間溝部を含む断面を基準にし,心尖部に向かう赤色のシグナルを描出することで行い,LAD血流の記録はわれわれが以前に報告した手法を用いて行った.拡張期最高血流速度(MPV),average peak flow velocity(APV)を計測し,CFVRはアデノシン0.16mg/kg/min投与前後のAPVの比と定義した.【結果】肺体血流比2.0±0.7,肺体血圧比0.49±0.31であった.VSD群におけるRPDのMPV,APVはそれぞれ38±13cm/sec,27w8cm/secであり,LADのMPV(51±13cm/sec),APV(34±8cm/sec)に比し有意に低値であった(p < 0.01).RPDとLADのCFVRの間に差を認めなかった(1.84±0.34 vs 1.97±0.51,p = ns).RPD-CFVR,LAD-CFVRはPp/PsおよびQp/Qsが増加するに従い有意に低下し,Pp/PsはRPD-CFVR(r = -0.74,p < 0.01)と,Qp/QsはLAD-CFVR(r = -0.69,p < 0.05)と最もよい相関を示した.【結語】VSDではRPDとLADの血流速度は異なるが,CFVRに差を認めなかった.しかしながら,RPD-CFVRはPp/Ps(右室圧)に,LAD-CFVRは左室容量負荷(Qp/Qs)により強く影響された.心エコー法を用いることにより,右室圧負荷,左室容量負荷を伴うさまざまな先天性心疾患の術前,術後遠隔期における左右冠動脈血流動態が明らかになると期待される.

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