P-II-A-2
川崎病γグロブリン治療前後でのナトリウム利尿ペプチド(ANP,BNP,CNP)値と組織ドプラ心エコー図所見
日本医科大学小児科
初鹿野見春,勝部康弘,渡辺美紀,池上 英,内木場庸子,上砂光裕,深澤隆治,小川俊一

ナトリウム利尿ペプチドとしては現在までに心房性(ANP),脳性(BNP),C型(CNP)の 3 種類が知られている.ANP・BNPは心臓から分泌される循環調節ホルモンであり,心不全や心筋梗塞,心筋炎などのほか,川崎病急性期にも上昇がみられるといわれている.一方CNPは主に血管内皮細胞から分泌される血管拡張物質で,特に血管障害部位で産生が増加するといわれているが,川崎病での報告はない.今回川崎病における心・血管病変の評価のため,ナトリウム利尿ペプチド値と心エコー図所見の変化を比較検討した.【対象】川崎病患児16例(男児10例,女児 6 例,平均年齢2.3歳).急性感染症 6 例(平均年齢1.5歳)をコントロール児とした.【方法】血漿中ANP・BNP・CNP値の測定は,川崎病児ではγグロブリン治療前・後,コントロール児では入院時に行い,また同時期に組織ドプラ法による心機能評価を行った.【結果】川崎病児のγグロブリン投与前・後でのANP値(正常値40pg/ml以下)の平均はそれぞれ73,36,BNP値(正常値20pg/ml以下)はそれぞれ63,16であった.なお,コントロール児ではANP 32,BNP 8と上昇を認めていない.一方CNP値(pg/ml)は治療前後の平均がそれぞれ 7,8 で,コントロール児は 6 といずれも低値であった.検討を行った心機能パラメータのうちE/Aとstrainは治療後に改善したが,冠動脈壁エコー輝度は治療前後で変化しなかった.なお最大冠動脈径(左主幹動脈)の平均値は2.4mmであった.【結語】川崎病急性期に上昇したANP・BNP値は治療後速やかに正常化し,同時に低下していた心収縮能・拡張能も改善した.一方CNP値については有意な変化は得られなかった.一つの理由としては,今回検討した症例の中には明らかな冠動脈病変を認めたものがなかったことが考えられる.

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