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若年性特発性関節炎へ移行したヒト免疫グロブリン静注療法不応の川崎病症例
宮崎大学医学部小児科
小泉博彦,佐藤潤一郎,久保尚美,高木純一

【背景】川崎病急性期の経過中に,関節の腫脹・発赤・疼痛・熱感などがみられることがあり,若年性特発性関節炎(JIA)に移行したと考えられる例は過去にも散見される.【症例】生来健康な14歳男児.家族歴に自己免疫疾患なし.発熱と肝機能障害を主訴に前医に入院し,第 5 病日に診断基準をすべて満たしたため川崎病と診断された.原田のスコアを 5 項目満たしており,同日にヒト免疫グロブリン静注療法(IVIG)1g/kgが行われた.IVIG後一時解熱したが,第 9 病日に再度発熱し,炎症反応の上昇・心電図異常も認められたため,同日当科に転院となった.【経過】転院時WBC 20,900/μl(Neut. 93%),CRP 22.1mg/dl.心エコー図検査では両冠動脈の軽度拡大と僧帽弁および三尖弁逆流が認められ,心電図で 1 度の房室ブロックと右側胸部誘導に軽度ST上昇がみられた.当科にてIVIG 1g/kgを 2 回追加するも完全に解熱しないため,methylprednisoloneパルス療法を施行.いったん解熱するものの,prednisolone減量中に再発熱およびCRP上昇を繰り返し,同時に強い四肢関節の痛みも訴えるようになった.第15病日には膜様落屑も認められた.経過より川崎病からJIAへの移行と考え,methylprednisoloneパルス療法を行った後にJIA治療に準じてprednisolone漸減を行った.その後,関節症状は消失し,第51病日に解熱,CRPも陰転化した.有熱期の抗核抗体は陰性で,P-ANCA 10倍未満,RAテスト(±),MMP-3 は155ng/mlと軽度上昇していた.冠動脈拡大は一過性であり,解熱後の心臓カテーテル検査にて冠動脈病変は認められず,心電図所見も改善した.現在,prednisolone漸減中である.【まとめ】川崎病と若年性特発性関節炎の鑑別は困難であるが,ヒト免疫グロブリン静注療法不応の川崎病症例の中には,若年性特発性関節炎への移行例が存在しうることも念頭において治療していく必要性があると考えられる.

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