P-II-A-6
腹部大動脈瘤を含む多発性動脈瘤を来した川崎病の長期フォローアップ
金沢大学医学部小児科
石崎顕子,山崎治幸,斉藤剛克,丸箸圭子,太田邦雄,小泉晶一

【はじめに】腹部大動脈瘤を含む川崎病重症例の管理は依然として大きな問題であるが,長期観察例の報告は少ない.【症例】症例は16歳女性.生後 2 カ月時に川崎病に罹患.ガンマグロブリン,アスピリン投与にて解熱せず当院を紹介された.受診時にはすでに巨大冠動脈瘤を認め,心筋炎,心不全を伴っていた.ドーパミン,ドブタミン,利尿剤を開始し,ガンマグロブリン,アスピリン,ジピリダモール,プレドニゾロン投与を行った.33病日に解熱したが,冠動脈瘤(RCA 6mm,LAD 12mm,LCX 5mm)と壁在血栓も認め,ヘパリン,ウロキナーゼ療法も行った.発症後 4 カ月時の心カテにて,冠動脈は 3 枝とも動脈瘤を認め,RCA,LADは閉塞していた.左室の壁運動は全体的に低下し,Sellers分類 3 度の僧帽弁逆流を認めた.その他,左右鎖骨下動脈,左右鎖骨下から腋窩の動脈・右後脊椎動脈・右内腸骨動脈・左内頸動脈・腹部大動脈に動脈瘤を認めた.その後,1 歳,5 歳,9 歳時の心カテでは,RCA,LAD,LCXの再開通,側副血行を認めている.16歳時の心カテではLVEF 48%,CI 4.2l/min・m2であり,腹部大動脈瘤と腋窩動脈瘤の退縮は認めていない.現在胸痛を時折認め,NYHA分類 2 度の心不全症状を残している.【考察】乳児期発症例や,ガンマグロブリン不応例では巨大冠動脈瘤や腹部大動脈など大血管にも動脈瘤を来しやすいと言われている.本症例も乳児期発症の重症川崎病であり,多発性動脈瘤を残し,発症 4 カ月時では冠動脈は閉塞していた.しかしその後,冠動脈の再開通・側副血行の発達を認め,心不全症状の改善を認めた.体血管大動脈瘤も巨大瘤は永続していた.【結語】腹部大動脈瘤を含め,多発性動脈瘤を来した症例の長期フォローアップを行うことができた.川崎病の重症例では体血管にも注意が必要であり,形成された腹部大動脈瘤は,巨大病変が永続する可能性がある.

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