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当院における川崎病急性期治療成績の比較
仙台医療センター小児科(旧国立仙台病院小児科)1),加納こども医院2)
柿澤秀行1),加納一毅2)

【目的】川崎病急性期治療の変化に対応する冠動脈後遺症の発生状況について検討する.【対象と方法】当院での急性期治療成績を 3 群に分けて検討した.1 群はガンマグロブリン静注(以下IVIG)導入前の1980年 1 月から36カ月間に入院した95例,2 群は400mg/kgのIVIGを 3~5 日投与するIVIG大量療法を行った1992年 1 月から40カ月間に入院した101例,3 群は 1g/kgを基本として,重症例には 2g/kg投与するIVIG超大量療法に加え,ウリナスタチンやステロイドなどの補助療法を併用した2001年 3 月から30カ月間に入院した101例.全例に経口のアスピリンもしくはフルルビプロフェンを併用した.冠動脈後遺症判定は,1 群は有熱期間 7 日以上の全症例に対し心血管造影を施行.2 群と 3 群は全例に断層心エコーを複数回施行して判定した.1 群については厚生省班会議の冠動脈障害診断基準に基づき,2,3 群では2003年日本川崎病研究会の基準に基づき判定した.【結果】IVIGは 2 群では83%,3 群では91%の症例に投与された.冠動脈後遺症は 1 群18%,2 群 7%,3 群 3%であった.内訳は,1 群では拡大 8 例,中等瘤 6 例,巨大瘤 3 例,2 群では 1 カ月までに退縮した拡大例が 2 例,中等瘤が 5 例,3 群では 1 カ月までに退縮した拡大例が 1 例,拡大例が 1 例,中等瘤が 1 例と,3 群は冠動脈後遺症の軽症化が認められた.有熱期間も 2 群に比べ 3 群の方が短かった.3 群の治療内容を検討すると,1g/kgのIVIG投与で解熱が得られたもの43%,2g/kgを超える投与を要したもの24%で,うち 1 例に中等瘤が残った.【考察】IVIG超大量療法と補助療法を併用することにより,冠動脈後遺症の軽減が得られた.超大量療法は冠動脈後遺症の予防に有効であるが,1g/kgで十分な症例も多かった.IVIG不応例に対する治療の確立が望まれる.

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