P-II-A-10
川崎病患者におけるIVIG治療前のHelicobacter pylori抗体価
東邦大学医学部第一小児科1),東京女子医科大学循環器小児科2)
星田 宏1, 2),嶋田博光1),高月晋一1),中山智孝1),石北 隆1),松裏裕行1),佐地 勉1),古谷道子2),松岡瑠美子2)

近年,Helicobacter pylori(HP)感染症が胃・十二指腸以外の疾患の病態にも関与する可能性が指摘されている.虚血性心疾患患者では健常人より有意にHP IgG抗体保有率が高いことが報告され,HPは冠動脈疾患の危険因子として関心を集めるようになった.また,大動脈瘤の発生にも関与しているとの報告もある.今回,川崎病(KD)の冠動脈病変の成因への関与を検討する目的で,KD患児の入院時HP抗体を測定した.【対象・方法】対象は1998~2003年にKD典型例と診断され入院した患児41人.年齢は 2 カ月から 7 歳 7 カ月(中央値 1 歳 6 カ月),男女比は20:21であった.入院時,IVIG投与前の血清中HP IgGおよびIgM抗体価をEIA法で測定した.また,冠動脈の評価は心エコーで行い,4mm以上を拡張とした.【結果】採血時の病日は平均3.9日,IgG抗体のみ陽性であった患児は 1 歳 1 カ月と 1 歳 6 カ月の女児の 2 人(4.9%),IgM抗体のみ陽性は 3 カ月の男児 1 人(2.4%),IgGおよびIgM抗体ともに陽性は10カ月の女児 1 人(2.4%)とIgGまたはIgM抗体陽性は 4 人(10.0%)であった.急性期に冠動脈拡張を認めたのは 3 人(7.3%)で,うち 1 人は巨大冠動脈瘤を形成した.KD発症直前にHPに感染したと考えられるIgM抗体陽性者 2 人と,既感染と考えられるIgG抗体陽性者 2 人のいずれにも冠動脈拡張は認めなかった.また,冠動脈の拡張があった 3 人のHP抗体は陰性であった.【考察および結語】日本人小児のHP抗体保有率は10歳までは 5~10%と報告されている.今回,KD患児の血清でのIgG抗体保有率は一般頻度と有意差がなく冠動脈病変の成因にHP感染が関与している可能性は確認されなかった.

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