P-II-G-5
乳児期発症の拡張型心筋症
静岡県立こども病院循環器科
伴由布子,鶴見文俊,石川貴充,大崎真樹,満下紀恵,金 成海,田中靖彦,小野安生

【目的】小児の拡張型心筋症は乳児期発症が多く,当施設でも過去23年間で経験した26症例(日齢 0~15歳)中19例(73%)が初診時 1 歳未満であった.乳児期発症の拡張型心筋症について,臨床経過,予後を検討する.【対象・方法】1980年から2003年の24年間に当院で拡張型心筋症と診断された 1 歳未満の19症例(男10女 9)について初診時臨床像,胸部X線所見,心エコー所見,初期治療への反応,血中ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値などについて後方視的に検討した.【結果】19例中死亡は 9 例,生存中は10例である.初診時月齢は 2 カ月未満が 6 例,2~6 カ月が11例,7 カ月以上が 2 例であった.初診時 2 カ月以上の死亡が13例中 3 例(23%)に対し,初診時 2 カ月未満の死亡は 6 例中 5 例(83%,うち 2 例は遠隔期に死亡)であった.同胞が同疾患で死亡している 3 例は全例死亡した.初診時ショック状態であった 5 例のうち 4 例が死亡した.初診時の心エコー所見(左室駆出率,左室収縮期径),胸部X線心胸郭比,BNP値については生存例と死亡例の間で有意差を認めなかった.初期治療は強心剤,血管拡張剤の経静脈的投与で開始,1985年以降の症例にはACE阻害剤の内服を行った.初期治療への反応(1 カ月以内の臨床症状改善)が悪かった 6 例は全例死亡した.β-ブロッカーを 3 例に使用したが,1 例(死亡例)は著明な心機能悪化がみられ断念,2 例は導入後,遠隔期に 1 例は死亡,1 例は再び入院加療中である.生存10例中 6 例が心機能が正常化し投薬や運動制限なしで経過観察中である.【考察】乳児期発症の拡張型心筋症は,2 カ月未満の発症,初診時にショック状態を呈した症例,初期治療への反応が不良な症例,で予後が不良であった.また,同胞が同疾患により死亡している場合も予後は不良であり,遺伝子の異常も考えられる.

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