P-II-G-6
急性心筋炎を発症した造血幹細胞移植後急性白血病の 1 症例
獨協医科大学小児科1),獨協医科大学救急医学2)
坪井龍生1),仲島大輔1),三上哲也1),萩澤 進1),佐藤雄也1),黒澤秀光1),杉田憲一1),江口光興1),大津 敏2)

【背景】急性白血病の造血幹細胞移植に合併する心筋炎は前処置に伴うものがほとんどで,移植後の発症はまれである.今回,幹細胞移植後に発症した 1 例を経験したので報告する.【症例】5 歳男児.【家族,既往歴】特になし.【症状経過】4 歳時に発症した急性リンパ性白血病で東京小児がん研究グループの治療プロトコールにより治療を開始し,4 歳 7 カ月時,母より末梢血幹細胞移植を行った.移植後10日ごろより発疹を主としたGVHDを発症し,ステロイド投与を行った.移植後 5 カ月時,血液検査にて,心筋逸脱酵素(CK 2,798U/l)の上昇,ECGで,CRBBBを認めた.数日後胸痛,徐脈を呈し,ECG上完全房室ブロック,心エコーで左室収縮率低下を認め,CKも6,525U/lとなり,急性心筋炎,うっ血性心不全と診断した.人工呼吸管理の下,カテコラミン,HANP,一時ペーシング,ガンマグロブリンなどにより治療を行った.一時,心房細動,心室細動などが出現し状態の悪化を認めたが,5 日後には循環状態が安定した.その後,CRBBB,Wenckebach型 2 度房室ブロックを認めるものの再燃は認めていない.【考察】急性白血病において造血幹細胞移植に関連する心筋炎は移植前に行われる化学療法による心筋障害に関連して起こることが多い.今回は,GVHDによる心筋障害の可能性とステロイドの長期投与により易感染傾向となりウイルス感染などによる可能性が考えられた.

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