P-II-G-7
MRIで経過をみた急性心筋炎の 1 例
医療法人あかね会土谷総合病院小児科
下薗彩子,大崎 秀,脇 千明

【はじめに】近年,Gd-DTPAによる造影 MRIで,心筋血流や組織性状を評価することが可能となり,急性心筋炎にも応用されている.今回,急性心筋炎の診断および経過観察に造影MRIが有用であったので報告する.【症例】12歳男児,既往歴に特記すべきことなし.入院 2 日前より胸痛(狭心痛様で,約30分持続)が出現し,血液検査で心筋逸脱酵素の上昇があり,当科紹介入院.心拍数60/分,呼吸数25/分,血圧100/60mmHg,嘔気・食欲不振あり.心胸比46%,心電図はV2-V4で軽度のST上昇とPVCの散発あり.心エコーでは,中隔壁がやや浮腫状であるが,心室壁の局所異常運動はなく,EF 83%で,心嚢水の貯留なし.血液検査でCPK 1,457 IU/l,CK-MB 163.0 IU/l,トロポニンT 8.16ng/mlと心筋逸脱酵素の上昇あり.急性心筋炎の診断で,γグロブリン療法を施行.翌日よりPVCが頻発するようになり,リドカインを開始.その後症状は消失し,血液検査は改善し,PVCは散発のみとなった.第12病日に心臓カテーテル検査を施行,冠動脈造影は正常で,心筋生検(右室心筋より採取)では明らかな心筋炎の所見は得られなかった.第14病日に心臓MRIを施行,左室心筋の造影効果は不均一で,造影遅延相で左室後壁の部分的な壁の菲薄化と造影効果を認めた.第15病日に退院.発症から 2 カ月後は,MRIで同部位に造影遅延相での造影効果を認めており,PVCも散発していたが,半年後には画像上正常化しており,不整脈もほとんどなく,心電図・心エコーは正常である.【結語】急性心筋炎の細胞障害部位や範囲の評価に,Gd-DTPAによる造影MRIが有用であった.MRIは低侵襲で,外来で繰り返し施行することができるので,follow-upに使用できる可能性がある.

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