P-II-G-8
左室拡張障害を主体とし,突然死した左室心筋緻密化障害の 1 例
北海道大学医学部小児科
齋田吉伯,村上智明,石川友一,武田充人,上野倫彦

【はじめに】左室心筋緻密化障害の臨床像は左室収縮障害,拡張障害,不整脈等さまざまである.今回,心電図異常で発見され左室拡張障害を認め,フォロー中,突然心肺停止となった症例を経験したので報告する.【症例】症例は 9 歳時に学校心電図検診で異常を指摘され当院を受診した.心エコーで異常を認めず 1 年ごとのフォローとしたが,以後外来を受診しなかった.12歳時,心電図検診で再び異常を指摘された.心エコーで形態的には左室心尖部に粗い肉柱形成を認め,血行動態的には左室拡張末期圧の上昇が認められた.心臓カテーテル検査では肺動脈楔入圧18,左室拡張末期圧18,LVEDV 69%,LVEF 70%,左室造影では心尖部に粗い肉柱を認めた.血中ノルアドレナリン281pg/ml,ANP 147pg/ml,BNP 250pg/mlであった.左室拡張障害を伴う左室心筋緻密化障害と診断した.ACE阻害剤を開始したが神経体液性因子は徐々に上昇し,17歳時にはノルアドレナリン1,090pg/ml,ANP 317pg/ml,BNP 783pg/mlとなったためβ遮断剤を開始した.β遮断剤開始後,神経体液性因子は低下傾向を示した.18歳時に施行したホルター心電図ではわずかな期外収縮を認めるのみであった.心エコーでの左室収縮障害は認めなかった.19歳時,職場で倒れているのを発見され,救急隊が到着した時心肺停止状態であった.PCPSを含む蘇生術を施行したが,重度の低酸素脳症となった.呼吸管理も不要となり退院を予定していたが,突然,完全房室ブロック,心室細動となり死亡した.【結語】左室収縮障害はなく左室拡張障害を主体とした左室心筋緻密化障害の 1 例を経験した.7 年間の外来フォローで危険な不整脈,収縮障害の悪化がなかったが突然心肺停止となった.左室心筋緻密化障害では本症例のような突然死の可能性を考える必要がある.

閉じる