P-II-G-12
学校検診を契機に診断されたBNP高値を呈する特発性拘束型心筋症の 1 例
宮崎大学医学部小児科
久保尚美,高木純一,佐藤潤一郎,小泉博彦

【はじめに】拘束型心筋症は,コンプライアンスの低い硬い心室(stiff ventricle)の存在により心室の拘束型拡張障害と拡張期容量の減少を認める,まれな疾患である.心室の壁厚と収縮能は正常,または正常に近い.心アミロイドーシスなどによる二次性と,病因不明な特発性に分けられる.小児での報告は非常に少なく,予後は成人に比し不良である.【症例】14歳女児.小学校 1 年時の学校検診心電図にて不完全右脚ブロックを指摘されたが,精査にて異常なしと判断された.中学校 1 年時の学校検診心電図にて左房負荷およびST-T変化を認め,精査目的で当科を受診した.心不全症状は認めなかったが失神の既往あり.理学所見に異常なし.胸部X線では軽度の心拡大がみられたが,肺うっ血は認めなかった.心電図では左房負荷,I,II,aVLおよびV4-6 のST低下を認めた.心エコー図では,両心房の著明な拡大,パルスドプラ法にて左室流入速波形のE/A増大(E/A = 3.1)およびE波の減速時間の短縮(75msec)などの左室拡張障害を示す所見が得られた.左室収縮能は正常で左室腔の拡大や壁肥厚は認めなかった.心臓カテーテル検査では,左室拡張終期圧25mmHg,右室拡張終期圧16mmHgと両心室の拡張終期圧上昇を認めた.冠動脈造影に異常は認めなかった.ANP 420pg/ml,BNP 524pg/mlとナトリウム利尿ペプチドの異常高値がみられた.特発性拘束型心筋症と診断し,利尿剤,ACE阻害剤を投与の上経過観察中であるが,胸部X線上心拡大は進行しており,BNPも964pg/mlに上昇している.【結語】学校検診を契機に診断された拘束型心筋症の症例を経験した.学校検診の心電図ではP波の形態,ST-T変化に十分注意を払う必要があることを痛感した.BNPは拡張不全による心不全にて有用な指標と考えられている.本症例は診断時よりBNPの異常高値を示しており,心臓移植も念頭においた注意深い経過観察が必要であると思われる.

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