P-II-G-13
発作性上室性頻拍を伴ったDanon病(X連鎖性空胞性心筋症・ミオパチー)の 1 例
慶應義塾大学医学部小児科
福島裕之,山岸敬幸,土橋隆俊,仲澤麻紀,林 拓也,古道一樹

【背景】Danon病(X連鎖性空胞性心筋症・ミオパチー)は1981年に初めて報告された,肥大型心筋症,ミオパチー,精神発達遅滞を主徴とするまれな疾患である.本症における心病変については,心筋症は通常進行性であること,不整脈を伴うことがあること,心不全または伝導障害により30歳代で死亡することが多いことが知られているが,詳細は不明である.今回発作性上室性頻拍を繰り返し,頻拍の抑制にβブロッカーが有効であったDanon病の 1 例を経験したので報告する.【症例】症例は10歳男児.4 カ月時に筋緊張低下,10カ月時に筋逸脱酵素(CK,GOT,GPT,アルドラーゼ)高値,心電図上の左室肥大を指摘された.1 歳 0 カ月時に当科受診.このとき精神運動発達は正常で,家族歴に特記すべきものなく,ミオパチーを伴う肥大型心筋症と臨床診断した.以後心筋症は徐々に増悪したため,8 歳時に診断を目的とした骨格筋生検を行い,Danon病と診断した.後に責任遺伝子であるLAMP-2 遺伝子の変異が証明され,Danon病と確定診断した.9 歳時に,繰り返し頻拍発作(最長70分間)を生じるようになった.救急車中で記録された頻拍時の心電図所見(心拍数230/分)などから発作性上室性頻拍と診断した.背景に肥大型心筋症が存在すること,発作中に循環不全徴候を認めることがあることから,βブロッカー(プロプラノロール)の内服を開始した.約1.3mg/kg/dayの投与により,頻拍発作は消失している.【結語】(1)Danon病に発作性上室性頻拍を伴うことがあり,注意を要する.(2)発作性上室性頻拍の抑制にβブロッカーが有効である可能性がある.

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