P-II-A-11
川崎病冠動脈障害に類似した冠動脈瘤閉塞により心筋梗塞を発症した27歳の症例
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
井埜晴義1),鶏内伸二1),津田悦子1),黒嵜健一1),塚野真也1),山田 修1),越後茂之1),小林順二郎2),北村惣一郎2)

【背景】川崎病は乳幼児期に好発する原因不明の疾患である.川崎病冠動脈障害に類似した冠動脈瘤内血栓により心筋梗塞を発症した成人例を経験したので報告する.【症例】27歳,男性.26歳時,起床後に胸痛,両手のしびれを認め,近医内科を受診し,急性下壁心筋梗塞と診断された.選択的冠動脈造影(CAG)で右冠動脈(RCA)seg1 の瘤と瘤内血栓を認め,血栓吸引と経皮的冠動脈形成術(POBA)が施行され,再灌流された.1 カ月後のCAGではseg1 の血栓は消失し,灌流良好だった.以後,ワーファリンが投与され外来で経過観察された.27歳時,睡眠中に胸痛を認め,同医でのCAGでseg1 の完全閉塞を認め,冠動脈内血栓溶解療法が施行された.再灌流後,心室細動,血圧低下があり,電気的除細動が施行された.seg2 に狭窄を認め,POBAが施行されたが不変だった.1 カ月後のCAGではseg2 に50%の狭窄と左心室下後壁のasynergyを認めた.当科を紹介され,トレッドミルテストでV5のST低下,PVCがみられ,RI(99mTc)検査で下壁の灌流欠損を認めた.入院待機中に,胸部違和感を認め,EBTでRCAの閉塞が疑われた.冠動脈瘤の石灰化はみられなかった.CAGでseg1 の完全閉塞,seg3~4 への左冠動脈からの側副血行を認めた.ドブタミン負荷心エコーでは下壁のviabilityありと判断された.本人の希望もあり,OPCABG(右内胸動脈─橈骨動脈─後下行枝)が施行された.術後15日の心臓カテーテル検査ではバイパスの血流は良好だった.【考察】川崎病既往がなく成人期に川崎病類似の冠動脈障害がみられたことは,川崎病の原因を探る際に貴重な 1 例と考える.

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