P-II-G-15
低身長に対し成長ホルモン補充療法を行っている肥大型閉塞性心筋症の 1 例
東京慈恵会医科大学小児科
齋藤亮太,藤原優子,寺野和宏,浦島 崇,衛藤義勝

【背景】拡張型心筋症に対する成長ホルモン(GH)療法は運動能,NYHA重障度分類の改善,左室壁厚・左室重量の増加を来し,新たな慢性心不全治療薬として注目されている.一方,肥大型心筋症に対する知見はない.われわれは肥大型心筋症に低身長を合併した 5 歳男児にGH補充療法を行い,身長増加・心エコー変化を検討した.【症例】6 歳男児.生後 3 カ月時に心雑音を指摘され,心エコーにて心筋肥厚,左室流出路狭窄を認めたことから閉塞性肥大型心筋症と診断された.左室流出路狭窄は進行し心不全症状も認めるようになったことから,2 歳11カ月時に心筋切除術を施行した.術後強心剤,利尿剤,降圧剤で心不全コントロールが可能となり,NYHA 1 度の状態が維持できていた.4 歳検診で低身長を指摘されたが,骨年齢は 3 歳 3 カ月であり,GH分泌不全の所見も認めなかったことから経過観察となった.5 歳時に身長の伸び率が低下し,-2.7 SDの低身長に至ったため,GH補充療法を開始した.また児と母にSERCA 2の遺伝子変異を認めた.GH補充療法開始前の心エコー所見はLVEF 73%,IVS 12mm,LVPW 7mm,LVOT PG 9.7mmHgであった.GH療法開始 1 年後の心エコー所見はLVEF 83%,IVS 16mm,LVPW 6mm,LVOT PG 11mmHgであり,臨床症状の増悪も認めなかった.またANP,BNPの値もGH療法開始前と比べて有意な上昇は認めなかった.身長の伸び率は6.6cm/年であった.GH療法開始20カ月後の心エコー所見はLVEF 70%,IVS 16mm,LVPW 7mm,LVOT PG 14.5mmHgであった.心室中隔壁は右室側に肥厚してきており,有意な左室流出路狭窄は認めず,NYHA 1 度であるが,BNP値の上昇を認めている.【考察】今後身長の伸び率,心不全症状,心エコー所見などから,GH療法を中止する時期を検討する必要がある.

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