P-II-G-16
右冠動脈閉塞と閉塞性肥大型心筋症を伴ったNoonan症候群の 1 例
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科
小山耕太郎,高橋 信,松本 敦,佐藤陽子,千田勝一

【背景】Noonan症候群に冠動脈の奇形を伴うことはまれである.これまで報告された壁外冠動脈の閉塞は左冠動脈閉塞の 1 例のみである.また,肥大型心筋症(HCM)に壁外冠動脈の閉塞を認めた報告はない.われわれは右冠動脈主幹部の閉塞と閉塞性肥大型心筋症(HOCM)を伴ったNoonan症候群の 1 例を経験し,治療に苦慮したので報告する.【症例】7 歳の男児.生後 1 カ月時にHOCM,ASD,PSを伴うNoonan症候群と診断された.生後 4 カ月からプロプラノロールを投与されたが,次第に心肥大が増強し,易疲労性もみられたため 6 歳時に精査を行った.第 3 肋間胸骨左縁にLevine 3/6~5/6と変動する駆出性収縮期雑音を聴取した.胸部X線で心拡大と肺血管陰影の増強が,心電図で両室肥大と右房負荷がみられた.エコーでは両心室の肥大があり,特に左室前壁~前側壁(17mm)と前部心室中隔(15mm)で著しく,左室内腔は狭小化していた.僧帽弁の収縮期前方運動と左室中部~流出路での駆出血流の加速(4.4m/sec)がみられた.僧帽弁閉鎖不全は軽度で,左室流入血流のE/A比は0.74であった.また,径22mmのASDと圧較差65mmHgのPSを認めた.心カテでの左室大動脈圧較差は安静時10mmHgから負荷後54mmHgへ増大した.大動脈造影で右冠動脈開口部は造影されず,主幹部以下が左前下行枝からの側副血管を介して描出された.現在,プロプラノロールを増量して経過観察している.【考案】HOCMに対する治療として心室中隔の心筋切除術やアルコールによる中隔焼灼術,DDDペーシングが試みられているが,本例では右冠動脈閉塞の存在から前二者を行うことはリスクが高いと考えられる.一方,高用量のプロプラノロールが小児のHCMの予後を改善するとの報告があり,効果が期待される.なお,本例の治療方針につき国内外の 5 施設にコンサルトした.

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