P-II-G-18
心筋炎後の拡張型心筋症に対するβ遮断薬の効果と心機能の推移
北海道大学大学院医学研究科病態制御学生殖発達医学講座小児発達分野
盛一享徳,村上智明

【背景】慢性心不全治療に対するβ遮断薬の有効性が確立されつつある一方で,導入方法や至適量など不明な点も多い.今回われわれはβ遮断薬が著効した心筋炎後の拡張型心筋症例おいて,心機能の推移を経時的に検討した.【症例】症例は 4 歳男児.浮腫,乏尿を主訴に入院.胸部X線写真上心胸郭比(CTR)は64%で胸水を認め,超音波検査では左室短縮率(LVSF)0.09,心係数(CI)2.7 l/min/m2と高度のポンプ機能不全を認めた.心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)も高値であった.拡張型心筋症の診断でPDE阻害薬の持続点滴,利尿剤およびACE阻害薬の内服を開始した.しかし心不全状態が改善した後もPDE阻害薬を減量できずβ遮断薬を導入した.カルベジロールを0.1mg/kgより0.1mg/kg/週ずつ漸増し,10週間かけて1.0mg/kgまで増量した.導入後はPDE阻害薬から容易に離脱できた.退院時はCTR 49%,LVSF 0.32,CI 4.9 l/min/m2であった.表に心機能の推移を示す.【考案】β遮断薬導入によりまず後負荷が低下し,後に収縮性が改善することが示唆された(表).カルベジロール投与0.8mg/kg前後から各種パラメータが改善し始めた.重症心不全では認容性がある限り投与量を増やす必要があると考える.


閉じる