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川崎病遠隔期の冠動脈病変と動脈硬化―平滑筋細胞のフェノタイプとデルマタン硫酸プロテオグリカン―
大阪市立大学大学院医学研究科病理病態学1),山田赤十字病院循環器科2),天理よろづ相談所病院小児循環器科3),三重大学医学部小児科4),千葉大学大学院医学研究院小児病態学5)
白井伸幸1),上田真喜子1),大西孝宏2),西川英朗2),松村正彦3),三谷義英4),寺井 勝5)

【背景】われわれもすでに報告しているように,小児期の川崎病罹患から長期間を経て,不安定狭心症や急性心筋梗塞を発症する成人若年者の症例が報告されてきている.このような症例の冠動脈のculprit lesionには,不安定プラークや血栓の存在が明らかにされている.われわれは,これまでの病理学的研究から,川崎病罹患患者の冠動脈病変が,動脈硬化性プラーク,さらには不安定プラークへと変遷する可能性があることを示唆してきているが,この変遷のプロセスについてはいまだ全く不明である.デルマタン硫酸プロテオグリカン(DS-PG)は細胞外マトリックスの一つであり,通常の進行した動脈硬化性プラークにはDS-PGの局在が認められる.われわれは今回,川崎病剖検症例の冠動脈病変における平滑筋細胞のフェノタイプとDS-PGの局在との関連性について免疫組織化学的に解析した.【方法】川崎病罹患後 1 年 4 カ月~10年の 4 剖検例から得られた冠動脈病変41部位を検索した.抗DS-PG抗体の他,平滑筋細胞アクチンに対する 2 種類の抗体(HHF 35,1A4)を用いて,平滑筋細胞のフェノタイプを検索した.【結果】アクチン陽性の平滑筋細胞が主体のびまん性内膜肥厚部位では,DS-PGの局在は認められなかった.発症後10年の症例では,アクチン陽性平滑筋細胞に富む内膜肥厚部位にはDS-PGの局在は認められなかったが,平滑筋細胞の脱分化が進行した内膜肥厚部位にはDS-PGの明らかな陽性像が認められた.【結語】川崎病遠隔期の冠動脈病変では,平滑筋細胞の脱分化の進展に伴って,DS-PGの沈着が増加することが示唆される.これまでDS-PGと低比重リポ蛋白(LDL)との結合性が報告されているので,DS-PGの増加は,ひき続いてプラーク内の脂質増加に関与する可能性が示唆される.

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