P-II-B-1
チアノーゼ性先天性心疾患患者の血管新生促進因子の同定
千葉大学大学院医学研究院小児病態学
浜田洋通,東 浩二,本田隆文,遠山貴子,江畑亮太,寺井 勝

【背景】病的な血管新生は,固形腫瘍や糖尿病,関節リウマチなどの進行に重要で,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの生理活性因子の関与が知られている.チアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)においても肺動静脈瘻など病的血管新生が治療管理で重要である.CCHD患者血中のVEGF蛋白の上昇が報告されているが,果たしてCCHDにおける血管新生の中心的役割を担っているかは不明である.そこでインビトロ血管新生を応用してCCHDにおける血管新生促進因子の同定を試みた.【方法と結果】ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を,増殖因子を加えず,増殖因子の替わりにヒト血清を加えて培養することにより,ヒト血清による内皮細胞の毛細血管形成機能を判定した.CCHD 18名(小児13,成人 5)および同年齢の健常人血清を用いた.細胞外マトリックスゲルをコートしたプレート上でHUVECを三次元培養し,毛細血管形成機能を定量評価した結果,患者群で増加していた(小児患者 vs 健常148 vs 94% of internal control,p < 0.001.成人患者 vs 健常172 vs 122,p = 0.008).この血管新生機能の亢進は心内修復術後に正常域に低下した.毛細血管形成のステップである細胞増殖は両群間に差はなかったが,細胞遊走機能は患者群で亢進していた.次に,CCHDに重要な血管新生因子の検索のため,血管新生分子であるVEGF,angiopoietin2,basic FGF,MCP-1,ハプトグロビンの抗体もしくは阻害剤を患者血清と反応させ,培養系におけるその抑制効果を検討した.その結果,VEGFの阻害でのみ毛細血管形成機能が低下する患者がいた.この低下はVEGFの補充により回復した.【結論】CCHD患者では血清中に血管新生を促進する分子が存在している.その一つはVEGFである.

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