P-II-B-2
肺血流増加型先天性心疾患における肺血管機能障害の検討(1)―動物モデルの作成について―
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
問山健太郎,糸井利幸,白石 公,濱岡建城

【背景・目的】肺血流増加型先天性心疾患において,増大したshear stressが及ぼす肺血管機能障害の詳細なメカニズムは不明である.今回,その病態を解明するにあたり,動静脈短絡モデルラットを作成し,その摘出灌流肺を用いて肺循環動態の分析が可能であるか検討した.【方法】(1)動静脈短絡モデルの作成:4 週の雄Sprague-Dawleyラットに全身麻酔後,左側腹部後方に縦切開を加え腹部大動脈および下大静脈を露出した.腎動脈分岐部直下で大動脈をクランプし,その末梢側に21Gの穿刺針で動静脈短絡を作成,止血,閉腹した.その後通常飼育を行った.(2)孤立肺灌流モデル:動静脈短絡モデルラットあるいは対照群としての無処置ラットに全身麻酔後,気管切開,気管内挿管,人工呼吸を開始.開胸直視下に右室流出路に切開を加え肺動脈内にカテーテルを留置した.心肺をen blocに摘出し灌流台に固定後modified Krebs-Henseleit液で灌流を開始.灌流は定常流にて行い灌流液は左房より回収した.30分の前灌流後,灌流量,酸素濃度に対する肺動脈圧の変化を見た.【結果】(1)動静脈短絡モデルラットでは,短絡作成後 1 カ月より対照群と比べ有意に左室内腔の拡大,全心重量の増加を認めたが,右室圧に変化は見られなかった.H-E染色では短絡作成後 2 カ月で著明な肺動脈中膜の肥厚を認めた.(2)孤立肺灌流モデルでは,純酸素負荷において対照群では平均肺動脈圧に変化が見られなかった.動静脈短絡ラットでは平均肺動脈圧が低下し酸素に対する血管拡張反応を認めており,肺血管の機能障害の存在が示唆された.【結論】動静脈短絡モデルでは肺血管の器質的変化を認め,機能障害の存在も示唆された.さらに孤立肺灌流モデルを用いることで高肺血流時の肺循環動態の解明に有用であると考える.

閉じる