P-II-B-3
低酸素負荷ラットモデルにおける心筋脂肪酸構成の変化および脂質過酸化に関する検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
岡達二郎,糸井利幸,濱岡建城

【はじめに】チアノーゼ性心疾患では高酸素濃度曝露による脂質過酸化が心筋障害を起こすことが報告されている.そして成人では心筋梗塞後において特にn-3 系多価脂肪酸[ドコサヘキサエン酸(C22:6)]摂取の有無と合併症とに関係があるとされる.C22:6 の投与により急性低酸素時に発生するカルシウム濃度急上昇を抑え心筋障害を軽減するとする報告もある.一方,低酸素環境における幼若期の心筋,特に膜の主構成である脂肪酸構成の変化を検討した報告は少ない.われわれは,低酸素負荷ラット心から抽出した脂肪酸10種の構成および脂質過酸化の指標であるmalondialdehyde変化について検討した.【方法】モデルは雄Wistar ratで 4 週(離乳期)および 8 週(成獣)を(1)低酸素群(FiO2 = 10%,n = 5~7),(2)対照群(room air,n = 5)に分けておのおので48時間飼育した.摘出心臓をLepage法にて脂肪酸抽出した後,gas chromatography - mass spectrometry(カラムDB23)にて10種の脂肪酸の分析を行った.malondialdehydeはYoshiokaらの方法に従いホモジナイズ心筋を30分,180分震盪したのちtiobarbituric acid法により吸光度(490nm)を計測した.【結果】体重,左室,右室,湿乾燥重量比は 4 週,8 週ともに群間差を認めなかった.脂肪酸構成は 8 週でC22:6 が対照群に比べ低酸素群で有意な低下を認めた[20.2対13.6(%mol),p = 0.007]が,4 週では有意差を認めなかった.その他の脂肪酸に有意差を認めなかった.malondialdehydeは 4,8 週ともに差を認めなかった.【考察】n-3 系脂肪酸には過度の血圧上昇を抑え,抗不整脈作用が存在し心筋保護に有意に働くとされており,離乳期では成獣期に比べ低酸素環境に対する適応能が高いと示唆された.48時間低酸素では脂質過酸化は認めなかった.

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