P-II-B-4
Stromal cell-derived factor-1(SDF-1)は心筋梗塞部位の血管新生を促進し,心機能を改善させる
日本医科大学第二外科1),日本医科大学小児科2)
佐々木孝1),深澤隆治2),小川俊一2),菅野重人1),新田 隆1),落 雅美1),清水一雄1)

【背景】stromal cell-derived factor-1(SDF-1)はケモカインの一つで,骨髄と末梢循環の間のtraffickingに重要な役割を果たしており,血管内皮前駆細胞を誘導して血管新生を促すことが知られている.マウス下肢虚血モデルではSDF-1 の局所投与により血管新生が促進され,虚血による障害が改善するという報告もある.【目的】今回われわれはSDF-1 が虚血心筋においても血管新生を誘導し,心機能を改善するかどうかをマウス心筋梗塞モデルを作成して検討した.【方法】C57BL/6Jマウス(♂;18~22g)を用い,左冠動脈ligationによる心筋梗塞モデルを作成した.梗塞作成後,(1)SDF-1 1μgを虚血心筋内に直接注入した群(AS群),(2)granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)100μgを腹腔内に連続 7 日間投与した群(AG群),(3)SDF-1 およびG-CSF 100μg両方を投与した群(ASG群),(4)生食を投与した群(Cont群)に分類した.梗塞作成後 2 週,4 週後にエコーにて心機能を評価した.また梗塞作成後 4 週目に組織を摘出し,HE,von Willebrand,Masson染色にて梗塞領域および血管新生の発現形態について上記 4 群の比較検討を行った.【結果】Cont群に比較し,AS群,AG群,ASG群では心エコー上有意な心機能の改善,および,組織上の梗塞領域の減少が認められた.また,AS群,ASG群では有意な血管密度の上昇を認めた.【考察】SDF-1 は虚血心筋の血管新生を促進し,心筋梗塞領域の減少と心機能の改善に寄与することが示唆された.

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