P-II-B-5
チアノーゼラット摘出心の虚血再灌流障害に関する実験的検討
岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科
藤田康文,石野幸三,伊藤篤志,河田政明,佐野俊二

以下の実験を行い,成長過程でhypoxiaに曝されたチアノーゼ心筋の虚血再灌流に対する反応を検討した.【方法】生直後の雄Wistarラットをroom air(n = 12)または低酸素環境(FiO2 = 0.12)(n = 12)で 4 週間(normoxia:n = 6,hypoxia:n = 6)または 8 週間(normoxia:n = 6,hypoxia:n = 6)飼育した.エーテル麻酔下に心臓を摘出.大動脈にcannulationし,95%酸素 + 5%窒素を流したK-H buffer(37℃),100cmH2OでLangendorff灌流を開始した.左心室内へballoon付きカテーテルを挿入した.灌流開始15分後,LVEDPが 8mmHgとなるようにballoonを膨らませた.30分間の安定灌流後,left ventricular developed pressure(LVDP),心拍数,+ dp/dtを測定し,虚血前値とした.大動脈を遮断し,20分間の常温虚血(37℃)後,40分間再灌流し,LVDP,+ dp/dt,心拍数を測定,再灌流後値とした.【結果】4W normoxia群と4W hypoxia群の比較では,虚血前のLVDPおよび心拍数は両群間に差がなかったが,+ dp/dtはhypoxia群で有意に高かった(3,792±303 vs 4,290±655mmHg/s;p < 0.01).両群間で再灌流後のLVDPの回復率および+ dp/dtの回復率はnormoxia群で有意に高かった(92±7 vs 57±7%;p < 0.01,95±8 vs 49±6%;p < 0.01).8W normoxia群と8W hypoxia群の比較では,虚血前の心拍数は両群間に差がなかったが,LVDPおよび + dp/dtはhypoxia群で有意に高かった(138±3 vs 149±5mmHg;p < 0.01,3,651±116 vs 4,362±562mmHg/s;p < 0.05).両群間で再灌流後の心拍数の回復率に差がなかったが,LVDPの回復率および + dp/dtの回復率はnormoxia群で有意に高かった(92±4 vs 39±6%;p < 0.01,93±8 vs 30±5%;p < 0.01).hypoxia群で4W群と8W群を比較すると,再灌流後の心拍数の回復率およびLVDPの回復率は両群間に差がなかったが,+ dp/dtの回復率は8W群で有意に低かった(p < 0.01).【結論】成長過程でhypoxiaに曝される期間が長いほど,虚血再灌流後の心機能の回復が障害されることが示唆された.

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