P-II-B-7
小児心臓移植の予後―渡航移植患者の長期的経過:1 施設の経験より―
国立成育医療センター循環器科1),国立成育医療センター心臓血管外科2)
百々秀心1),磯田貴義1),金子正英1),三平 元1),平田陽一郎1),山口佳世1),豊田彰史1),石澤 瞭1),関口昭彦2)

【背景】本邦の小児心臓移植症例数の年次推移を見ると,臓器移植法施行後にかえって増加傾向を示している.小児科領域の心臓移植は渡航移植に頼っているが,帰国してからは国内の病院の管理になっている.心臓移植の予後は,拒絶反応や感染症などの合併症や続発症により規定されるが,おのおのの施設が抱えている症例数が少ないこともあり,適切な治療やその効果に対する情報があまり公開されていない.【目的】われわれの施設での渡航移植後の患者管理を検討し,移植後の患者管理の問題点を検討する.【症例および結果】われわれは,4 人の渡航移植後の小児を管理してきた.現在,外来でフォロー中の患者は 2 人であり,2 人は経過観察中に死亡した.死亡した 1 名は,CMV感染症をきっかけに全身状態が悪化し,ICUでECMOを用いての治療を行ったが最終的には死亡した.他の 1 名は腹痛を主訴として救急外来を受診し,経過観察のため入院した直後に心停止を起こし死亡した.入院時にCKの上昇を認めたことと,剖検の心筋組織より細胞浸潤が認められたことより急性心筋炎と診断した.現在生存している 2 名のうち 1 人は,現在移植後 8 年目になるが,急性拒絶反応のために 1 回目の移植術後 1 カ月目に再移植を施行されている.その後の経過で右冠動脈の狭小化を認めたが,免疫抑制剤としてタクロリムスおよびセルセプトによりコントロールされている.他の 1 名は移植後 6 年目になるが,経過中に完全房室ブロックを生じ,ペースメーカの埋め込みを受けた.タクロリムスおよびセルセプトによりコントロールさせていたが,ブロックを生じた時点で拒絶反応と判断し,セルセプトからシロリムス(ラパマイシン)に変更した.【結語】心臓移植後の患児の管理は,拒絶反応,感染を中心として注意深いフォローが必要となる.症状の悪化はさまざまな臨床症状を示し,どんな小さな変化も見落とさないことが重要となる.

閉じる