P-II-B-8
AVSD(intermediate type)を認めたpolyspleniaの心疾患術後左心不全に,先天性門脈欠損(CAPV)による高NH3血症に対して生体部分肝移植(LRLT)を施行した 1 例
名古屋大学大学院発育加齢医学講座小児科学1),名古屋大学大学院小児外科学2),社会保険中京病院小児循環器科3)
大橋直樹1),沼口 敦1),安藤久實2),瀬尾孝彦2),金子健一朗2),落合恵子2),小倉行雄2),松島正氣3)

【はじめに】polyspleniaで,下大静脈欠損を高頻度に伴うことはよく知られているが,時に先天性門脈欠損(CAPV)の合併もみられる.血行動態的には,腸管からの血流が肝臓を経由せずシャント血管を通じて体循環に流入するため,高NH3血症を来し,portosystemic encephalopathyに至る場合がある.治療法としては,内科的治療でコントロールが試みられるが,不可能な場合には,生体部分肝移植(LRLT)が唯一根治的な治療法として選択されることになる.【症例】1 歳 8 カ月女児.胎児徐脈を指摘されており,出生後AVSD(intermediate type),下大静脈欠損,polyspleniaと診断された.新生児マススクリーニングでガラクトース血症を指摘され,精査にて肝内門脈形成不全が疑われ,特殊ミルクでの内科的治療が開始された.その後心不全が進行し,日齢75心房内septation,房室弁形成術が施行された.術後の心カテでは,LVp 89/EDP15,LV-ascAo圧較差15,MRはSellars分類でIII度であった.また,上腸間膜静脈と半奇静脈にシャント血管を認め,門脈欠損を造影で確認した.その後,嘔吐を伴う,意識障害,痙攣発作を認めるようになり,高NH3血症による脳障害と考え,母よりLRLTとなった.術前は,水分の過負荷により肺うっ血になりやすい左心不全の状態で,近い将来再手術が必要と評価されていた.術中は血管吻合時に血圧の変化はあまりみられず,術後も輸液を維持輸液の80%前後を目途に,また,左房圧を10前後に維持することに注意して,順調な経過をたどった.【結語】LRLTの問題点として,術中・術後の血行動態の不安定さが懸念されたが,左心不全の本症例は,術中血管吻合時などに前負荷の変化で血圧低下などの血行動態の不安定さはみられず,また,術後も血行動態は安定していた.Alagille症候群でみられる右心不全の状態に比べて,このような左心不全下でのLRLTは,心疾患の手術に先行させることも可能かと思われた.

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