P-II-B-9
膜様部型心室中隔欠損における大動脈弁逸脱と大動脈閉鎖不全の関連経食道エコー検査を行った年長児例の検討
国立循環器病センター小児科
北野正尚,山田 修,畠山欣也,廣野恵一,小田切徹州

【背景・目的】流出路型心室中隔欠損(VSD)の合併症に大動脈弁逸脱が知られているが,大動脈弁逸脱と大動脈弁閉鎖不全(AR)の出現や進行との関係は不明な点が多い.今回(流出路伸展を含む)膜様部VSDに伴う大動脈弁逸脱と大動脈弁閉鎖不全の関連性について後方視的に検討した.【方法】対象は2002年 7 月から2003年12月の間に当センターで経食道エコー検査を行ったVSD症例57例(年齢 4~60歳,中央値16歳).57症例中流出路伸展を含む膜様部VSD症例において,年齢,VSD径,拡張期herniation index(HI:仮想の正常大動脈弁から実際に変形している大動脈弁への最大距離/大動脈弁径),およびARについて相互の関連性を検討した.【結果】57例中,流出路伸展を含む膜様部VSD症例は21例.21例中,中隔瘤は20例に,右冠尖の逸脱は20例に,また無冠尖の逸脱は20例に認められた.VSD径は四腔像で平均18.2±4.5mm,長軸像で平均11.1±3.4mm.右冠尖拡張期HIは平均0.23±0.12,無冠尖拡張期HIは平均0.20±0.07であった.ARの重症度はなし 6 例,ほとんどなし 7 例,極軽度 3 例,軽度 3 例,軽度~中等度 2 例.ARの重症度と年齢,VSD径,右冠尖拡張期HI,および無冠尖拡張期HIにはいずれも関連は認められなかったが,(拡張期右冠尖HIと無冠尖HIの差)の絶対値とARの重症度には正の相関が認められた(ρ = 0.458,p = 0.406,spearmanの順位相関).またVSD径と右冠尖拡張期HI(ρ = 0.61,p = 0.006)および無冠尖拡張期HI(ρ = 0.48,p = 0.035)にはいずれも正の相関が認められた.【結論】年長児における流出路伸展を含む膜様部VSDにおいては,VSD径が大きい程大動脈弁右冠尖,無冠尖ともにより大きく逸脱するが,逸脱の程度とARの重症度には関連が認められなかった.ARの程度は弁腹ではなく大動脈弁中央部の変形によると考えられる.

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