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5 本の肺静脈を認めた肺静脈還流異常の 3 症例
東京都立清瀬小児病院循環器科1),東京都立清瀬小児病院心臓血管外科2)
河野一樹1),大木寛生1),葭葉茂樹1),菅谷明則1),佐藤正昭1),加島一郎2),鈴木孝明2),福田豊紀2)

【背景】肺静脈の還流を心エコーで確認する際に苦慮する場合がある.特に肺静脈が 5 本存在する例での診断は困難である.今回,私たちは心エコーでは確認できず,後の心臓カテーテル検査あるいは手術にて肺静脈を 5 本確認した症例を 3 例経験したので報告する.【症例 1】1 カ月健診でチアノーゼを指摘され,当科受診.総肺静脈還流異常(2a型)と診断.心エコーで共通静脈腔へ肺静脈が 4 本還流していることを確認.術中所見でも 4 本の肺静脈が共通静脈腔へ還流していることを確認.術後の心臓カテーテル検査で無名静脈へ還流している左肺静脈を確認.【症例 2】学校健診(6 歳時)で心電図異常を指摘され,当科受診.心房中隔欠損(静脈洞型)と診断.心エコーで 4 本の肺静脈が左房へ流入していることを確認.術中所見で右肺静脈を 3 本確認(右上肺静脈が上大静脈へ還流,右中・下肺静脈が左房へ還流).【症例 3】日齢 5,多呼吸,哺乳力低下を主訴に当科受診.心房中隔欠損,心室中隔欠損,部分肺静脈還流異常(心エコーで右上肺静脈が右房へ還流していることを確認)を合併したScimitar症候群と診断.心臓カテーテル検査で右肺静脈を 3 本確認(右上・中肺静脈が上大静脈へ,右下肺静脈が下大静脈へ還流).【考察】発生学的にみると,肺静脈は胎生初期に共通肺静脈と結合し左房へと吸収され,それ以前まで自由に交通していた体静脈系との吻合が閉鎖される.この左房への吸収に支障を来すと肺静脈の数的異常が起こると推測される.発生率は左右どちらかの肺静脈が 1 本である率は約24%,3 本である率は約1.6~2%であり,肺静脈の数の異常は決してまれなことではない.【結語】肺静脈還流異常では 4 本の肺静脈の還流を確認した症例であっても,5 本目の肺静脈の可能性を考慮する必要があると考えられた.

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