P-II-B-11
PDAを合併したabsent pulmonary valveのファロー四徴症の 1 例
神奈川県立こども医療センター循環器科
吉田実穂子,上田秀明,宮本朋幸,金 基成,林 憲一,康井制洋

【背景】absent pulmonary valveのファロー四徴症にPDAを合併した報告はほとんどない.今回,われわれは胎児期よりabsent pulmonary valve,ファロー四徴症にPDAの合併を診断した症例を経験したので報告する.【症例】妊娠35週で心内奇形を疑われ,当院へ紹介.胎児エコーにてabsent pulmonary valve,ファロー四徴症,動脈管の開存,右大動脈弓を確認した.心拡大が進行したため,計画分娩で38週 3 日,体重2,560gで出生.出生直後よりチアノーゼ,陥没呼吸,to-and-fro murmurを認め,人工呼吸器管理を開始した.左上肢前腕低形成,単指を認めた.胸部X線や心エコー上,重度の肺動脈弁逆流,右心系の拡大所見を認めた.日齢 2 より動脈管での左右短絡の増大傾向を認め,尿量減少などの左心不全徴候が出現し,強心剤の増量を余儀なくされた.日齢 7 に心臓カテーテル検査を実施,動脈管径は6.4mm,平均肺動脈圧ほぼ等圧,右室拡張期末期容積係数(RVEDVI)425%N,LVEF 74%,左室拡張期末期容積係数(LVEDVI)256%Nと著明な両室拡大を認めた.根治手術の方針とし,日齢12に手術となった.手術時所見では,肺動脈弁尖の形態はみられず,弁輪直上のridge形成がみられた.ridgeより先端の肺動脈は,瘤状の拡大を呈していた.術後,出血のコントロールが困難で,日齢17に壊死性腸炎を合併し,死亡した.剖検では大量の腸管壊死と腎実質の壊死を認めた.【考察】absent pulmonary valveにPDAを合併することはまれである.肺動脈瘤状の拡張は胎生期における動脈管の無形成によるものが 1 つの成因と考えられていた(Emmanouilides GCら,Am J Cardiol 1976; 37: 403).本症例では,胎児期より動脈管が開存し,かつ肺動脈の拡張を呈していたことから,既存の疾患概念とは違う発生要因の可能性や動脈管を認めない症例と比較してより早期に呼吸器症状を呈した可能性が推察される.

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