P-II-B-14
心合併症をもつNoonan症候群におけるPTPN11遺伝子の解析
大阪大学大学院医学系研究科小児発達医学講座小児科
那須野明香,小垣滋豊,高橋邦彦,黒飛俊二,大薗恵一

【背景】Noonan症候群の約45%がPTPN11(protein-tyrosine phosphatase, non-recepter type 11)遺伝子のヘテロの機能亢進変異をもつとされるが,心合併症とPTPN11遺伝子異常との関連は不明である.【目的】PTPN11遺伝子の変異の有無とその部位を明らかにし,臨床像との関連を調べる.【方法】Noonan症候群と診断され,心合併症をもつ 9 例を対象とした.PTPN11遺伝子の全翻訳領域でDHPLC法によりスクリーニングを行い,変異が疑われるものはdirect sequence法により確定診断した.心合併症と遺伝子検索の結果を比較検討した.【結果】9 例の内訳は,心筋症 7 例,肺動脈狭窄 1 例,不整脈 1 例であった.9 例中 2 例でPTPN11の点突然変異を認めた.(症例 1)6 カ月男児.先天性胸水および両大血管右室起始症があり,顔貌の特徴からNoonan症候群と診断.1 カ月より左室壁の肥厚が目立ち,3 カ月より左室流出路狭窄が進行した.PTPN11遺伝子のexon3において,塩基配列でG181A,アミノ酸ではD61Nとなる変異を認めた.過去に同じ変異部位の報告が 1 例あるが,臨床像は明らかでない.(症例 2)1 歳 2 カ月男児.1 カ月時に肥大型心筋症と診断.哺乳不良,多呼吸・陥没呼吸を認め,心不全治療を要した.PTPN11遺伝子のexon13において,塩基配列でC1528G,アミノ酸ではQ510Eとなる変異を認めた.これまでに同じ変異の報告はない.【考察】従来の報告では,Noonan症候群におけるPTPN11の異常は,肺動脈狭窄の合併例で多く心筋症例では少ない傾向があるとされる.今回われわれが調べた例では,いずれも,乳児期早期発症の重症の心筋症でPTPN11遺伝子の異常を認めており,心筋症合併とPTPN11変異について今後さらに検討する必要がある.

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