P-II-B-15
Marfan症候群患者に対するFibrillin遺伝子(Fibrillin-1 および 3)変異の解析
弘前大学医学部小児科1),弘前大学医学部保健学科2)
上田知実1),高橋 徹1),佐藤 工1),江渡修司1),佐藤澄人1),市瀬広太1),大谷勝記1),佐藤 啓1),米坂 勧2)

【緒言】Marfan症候群(MFS)はFibrillin-1(FBN1)遺伝子の変異により生じ,心血管系の合併症が予後に大きな影響を与える全身性の結合組織疾患である.遺伝子変異の検出率はおおむね50%であり,臨床症状の多様性からもMFSの原因,疾患を修飾する新たな遺伝子の存在が考えられている.近年,19番染色体上にFBN1遺伝子と60%以上の相同性を示すFibrillin-3(FBN3)遺伝子が同定された.この遺伝子座には特発性側弯症,Weill-Marchesani syndromeの家系が連鎖することが報告されている.そこでわれわれは,FBN1遺伝子の変異とともにFBN3遺伝子の変異を解析し,MFSの発症に関与する可能性を検討した.【対象と方法】MFS患者12人(10家系)に対し,同意のもとで末梢血リンパ球よりDNAを抽出し,CSGE法,direct sequence法を用いて解析した.missense variantについては健常ボランティア50例を対象として疾患特異性を検討した.【結果】MFS患者 4 人(3 家系)に新規のFBN1遺伝子変異を認めた.FBN3の解析では,計11例のvariantを認めたが,2 例はsilent variantであり,残りの 9 例中 8 例は遺伝子多型が考えられた.1 例は第15エクソンの 2038 G > Cのmissense variantであり,この変異によりG673Rのアミノ酸置換を生じることが予測された.健常者に同様の変異は認められなかったが,この症例はFBN1に変異を認めた.【考察】MFSを生じる新たな原因遺伝子の候補としてFBN3の遺伝子変異を解析したが発症の原因と考えられる変異は認められなかった.今回の検討からはFBN3遺伝子がMFSの発症に関与している可能性は低いと思われた.今後症例数を集積し,さらに他の結合組織疾患症例を含む大規模な変異解析や機能解析を行うことで,FBN3遺伝子の結合組織疾患に対する影響が解明されることが期待される.

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