P-II-C-1
学童期~青少年期における成長に伴う脈波の推移
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野
長谷川聡,佐藤誠一,沼野藤人,朴 直樹,遠藤彦聖,廣川 徹,内山 聖

【背景・目的】成人領域においては脈波を用いて「血管推定年齢」を算出し,動脈硬化などの血管病変を評価する試みがなされている.小児においては脈波の成長に伴う変化についてIketaniらが報告しているが,依然まとまった報告は少ない.今回私たちは学童期~青少年期における脈波の成長に伴う変化を検討した.【対象・方法】心疾患のない健常児29例で,内訳は男性15例,女性14例,5 歳~16歳(平均10.7歳)を対象とした.フクダ電子社製心電図自動解析装置(FCP-4731)に心音脈波インプットボックス(IB-70)を接続し,左第一指あるいは第二指に脈派トランスジューサ(TG-17)を装着した.10分以上の安静臥床の後に指尖容積脈波(PTG)を記録し,測定したPTGをIB-70で二次微分処理し加速度脈波(APG)を得た.得られたAPGから収縮初期陽性波(a波),収縮初期陰性波(b波),収縮中期再上昇波(c波),収縮後期再下降波(d波),拡張初期陽性波(e波)を同定し,基線から各波形の頂点までの偏位を測定した.収縮期前方成分として左室からの駆動圧波による血管の伸展性を表すb/a,収縮期後方成分として反射圧波を表すd/aを求めた.また,総合的な波形の評価として加速度脈波加齢指数(APG-AI)として(b-c-d-e)/aを求めた.【結果】b/aは成長に伴い有意に低下し,d/aは成長とともに有意に上昇した.また,APG-AIと年齢は負の相関を示した.【考察】小児期は血管も成長しており,成長に伴う血管の伸展性の向上は血管内腔の成長をみていると考えられる.末梢からの反射波を反映するd/aの変化は,末梢からの距離が離れるほど,つまり身長の伸びとともにその影響が減少していると考えられる.APG-AIは成人と同様年齢と強い相関を示したが,その反応は逆の相関関係であった.

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